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大事な名前

とりあげないで...といわれているようだった そんなつもりはなかった だけどユウがそう思うのは仕方がないことだとも思った 彼はいつもユウが欲しがるものをとりあげてきたのだから 「別に取ったりしないよ」 彼はぬいぐるみをユウの手に戻して口角をあげる ちゃんと笑えたのかは分からなかったけれど彼は自分なりの笑顔を作って見せた ホッとしたようにぬいぐるみを抱きしめて撫でまわすユウのそばからそっと離れていく 部屋をぐるりと見渡して思いだしたようにそこへ歩きだした 向かった先はキッチンに置かれた大きな食器棚 目線はその上に置かれたペンギンのぬいぐるみだった 見せただけで一度も触らせなかったユウの好きな”とり”のぬいぐるみ わざと見えるように置いてものほしそうに見上げるユウを眺めては楽しんでいた 見られていないと思って背伸びをしてその短い腕を目一杯伸ばしていたこともあった ぬいぐるみだけじゃない あいつが気にいったものを俺は全部届かないところにとりあげて だけど見えるように、欲しがるようにわざとちらつかせて届かないことを分からせた もう二度と触れないから欲しがってはいけないと自分から手放すように仕向けた 「ユウ」 夢中になっていても彼の声ですぐにピクッと反応して動きを止める 振り返ったユウの目が彼の手の中からはみ出したぬいぐるみを捕らえた 「これもやるよ」 彼は少年に向かってそのぬいぐるみを放り投げた

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