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大事な名前
「したい事をしようね」といった彼の言葉どおりユウを挟んで一日中遊んだ
ユウは椎名にもよく懐いていてとりわけ椎名の言う事はよく分かるようだった
「もしかして、これ?これがいいの?」
椎名の言葉に何度もうなづいて声こそ出さないものの2人は本当に会話をしているようだった
なんで分かるんだろう
彼はずっと2人っきりでいるのにユウが言いたい事はちっとも分からない
椎名と自分の違いを思い浮かべては見えない難問を突きつけられているような気になった
夜御飯を作っている間も椎名は休む事なくユウの相手をしていた
日ごろ構っていないせいなのかユウも衰えることなく夢中だった
食事の最中、椎名はユウに言った
「今度、おいしいって教えてあげるね」
「?」
「みつるくんのごはんはおいしいねって。」
「そういうのいらないから」
椎名はユウに覚えさせようと彼の名前をしきりに呼んだ
キョトンとした顔で少し考えてからうんうんとうなづくユウと本当に理解されてるかは分からないのにしきりに話かける椎名
2人を見ていると急速に苛立ちが芽生えてくるのを感じた
「ユウ、よそ見してないでさっさと食え」
彼は御飯をスプーンに乗せて半開きの口に突っ込むと
思いのほか量が多かったようでユウはゲホゲホとえづいてしまった
涙目で顔をあげるユウをみてはっと我に返り目元を拭って目を細めた
「ちょっと多かったな、ごめん」
そして今の一瞬引火して消えた火花を取り繕うように付け加える
「全部食べたらお風呂はいろ?またシャボン玉やってあげる」
そういうとユウは慌てるようにスプーンに噛り付いた
早く食事を終わらせたいみたいにせっせと口に運ばれた食事を飲み込んでいく
理解できたのか...
分かりたい、分かってあげたい、分かってほしい
けれどその気持ちの後ろに影のようにぴったりと"分かって欲しくない"というのがあるのを彼ははっきり感じていた
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