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どうしてあの時声をかけてくれなかったの?
そしたらきっと何か力になれたはずなのに...
それを言うのは簡単で、けれど言ってしまえば彼とっては酷でしかない言葉をどうしても言うう気にはなれなかった
ミツルの気持ちは痛いほど伝わってくる
ミツルが必死で探していた宝物を誰かに知られてしまえば傍に置いておくことなどできなかっただろう
あの頃彼は未成年で、保護したユウと生活することは誰にも認めてもらえない
彼は見つけた宝物を壊れ物のように手のひらに包んで大事にしていた
それがいつしか自分でも気づかぬうちに包んだ手の平を強く握りしめてしまっていた
”離れたくなかったから”
愛し方を間違えただけ、愛し方を知らなかっただけだ
そしてその真実を聞かされた今、自分にできることはなんだろうと椎名は考えた
その手のひらは握り潰してしまうためじゃなくて大事なものに寄り添うためであると教えてあげたい
ミツルの手はユウ手をつなぐためにあるもので、決して殴るためのものじゃない
閉じ込めるのではなくその手をひいて、いろんなものを見せてあげるためにあるのだということを
「君はどうしたい?これから...」
椎名は本題としてミツルに問いかける
本来ならそんなことは聞く必要もなく、二人を引き離しユウを保護すべきものである
そうすればユウには安全が保障されるだろう
だけどミツルは一体どうなる...?
罪にも問われるだろうけれど最も心配なのは心の方だ
ユウにはミツルしかいないけれど、ミツルにもまたユウしかいないのだ
それが分かっているのに引き離すことが最善だとは到底思えない
椎名はどうしてもミツルを見ていると出会った頃を思い出して、重ねてしまうのだ
繊細そうな瞳を揺らしながら素直に話をしてくれていたあの頃の彼を
これが非常識なのは分かっている
二人のためにはならないかもしれない
仮にも精神科医を名乗っているのに失格だ...けれどそれでもいいだろう
椎名は意志を固めるようにうなづいてもう一度ミツルに問いかけた
「君はこれからどうしたい?どうしたらいいと思う?」
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