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「先生は優しいからユウはきっと俺なんかより先生を好きになる」 ミツルははっきりとそう言ってそれが1番怖いと椎名に打ち明けた 「そんな事あるわけないじゃない」 椎名はあまりにも予想外のことを言われて驚き、目を丸くした なにがどうなるとそんな思考に行きつくのか..... 「なんでそう思うの?」 怪訝そうな顔で問いかける椎名にミツルははっきりと答える 「だって...名前呼んだ。先生の...俺のことだってわかんないのに」 ミツルはまるで子供のようにふてくされて口を尖らせている ユウは一度だってミツルの名前を口にしたことがない それなのに椎名のことは理解し言葉で「先生」と呼んだ だけど...必死で覚えようとしたユウを制していたのはミツルだ 覚えなくていい 名前なんて呼ばなくていい ユウは何も覚えないで自分の手の中で全部預けて生きていくようにと言い聞かせてきたのは他でもないミツルだ 椎名がが来てからのユウはいつも楽しそうで、いつも何かを求めてキラキラしていた 椎名はユウを傷つけたりなんかしない 優しくユウのペースでいろいろなことを教えてくれる人だ そんな相手を好きにならないはずがない どう転んでも自分が選ばれるはずがない ユウが椎名を選んで自分を捨てる事.....それがミツルの一番の恐怖だった 椎名はそんな彼を見て思わず吹き出して顔を緩ませる 「ふふふ、そんなことはないと思うけどな」 あまりにもあっさりと否定する椎名にミツルは食って掛かるように言った 「なんでそんなこと分かるの?!」 椎名は必死に訴えるミツルの顔を見ながら目を細めていく 穏やかに笑いながらなぜそう思うのかを話して聞かせた 「いつもユウくんってね...」 ミツルが出かけてからしばらくその場を動かないこと すごく寂しそうに扉を見つめていること ほんの少しの物音でも玄関に駆け出してミツルの帰りを待ちわびていること ミツルの名前を呼びたくて...でもうまく話せなくて泣いてしまうこと 「ユウくんはいつも君の事ばかり考えているよ?」 「そんなこと...」 「あるよ!分からない?あの子が一日で一番笑顔になるのは君が帰ってきた時なんだから」 椎名にそう言われたミツルは思わず呆けたようになってしまう ほかでもない椎名にそんな風に言ってもらえるなんて思わなかった 取られてしまう...取らないでほしいと思っていた そうなってしまえば自分に勝ち目はないと思っていた相手だったから 「君はもう少しあの子のことを信じてあげないといけないね」

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