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二人きり

ユウはイスに座りながら床に届かない足をプラプラさせて大人しくしている 目線の先にはキッチンにいるミツルの姿 カウンター越しに見える彼が時々こっちを見て目が合うと微笑んでくれる それが嬉しくて絶えず彼を目で追っていた キッチンでミツルが作業している間、ユウはずっとその後ろにべったりと張り付いて何度引きはがされてもウロウロと付いて回っていた 包丁や火を扱うことに危険を感じてミツルがユウをリビングまで連れてイスに座らせて待っているように言っても嫌がってすぐにイスから降りてまた傍に来てしまう ミツルは再度、ユウをイスに座らせて今度はゆっくり分かるように語りかけた 「ユウがケガしたら嫌だからここいて?」 「....?」 「すぐ戻ってくるから待ってて?お願い」 ミツルはしゃがみこんで話をしていたためにユウよりも目線が低く見上げるように見つめていた 見下ろされることしかなかったユウはなんだか不思議で仕方なかった けれど微笑みながらゆっくり優しい言葉で説明されてなんとなく理解できたようだった 「待ってて」はいつも聞かされていた言葉 待つのはユウができる限られたものの一つ ミツルは離れるときにユウの小さな小指を自分のと絡ませて何回か揺らして笑った 「すぐ戻るって約束するよ」 ユウにとって「約束」はよくわからない 今まで交わしてもらったことがなかったからだ ミツルがユウにさせるのは命令と服従 決められたことをするのは約束ではなくそこにユウの同意が存在したことはない だけど最近なんとなく分かったような気がしていた なぜなら「約束」というと彼は必ず小指を絡めてくれるからだ 小指を絡めるととてもいいことが起きる...ユウは自分の中でそう認識していた 小指を絡めるようになってから彼はとっても優しくなった 怒らなくなって、殴らなくなって、一緒に寝てくれるようになって、遊んでくれるようになった この指は願いを叶えてくれるもの 本当は... 本当はずっと我慢していたから ずっとずっと優しくしてもらいたかったから... しばらくして食欲をそそる匂いが部屋中を満たすとユウのおなかがキュルルと音を立てた 「できたよ!食べようか」

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