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二人きり

**** 「ん...まぶしい」 窓から差し込む強烈な西日に気づいてミツルは思わず顔をしかめた 目元を手で覆いながら寝室のカーテンを閉め忘れたことを思い出して身体を起こす ベットから足を下ろし立ち上がろうと体重をかけた時、自分の手に何かが触れた 「...?」 手が触れた先を見てみるとユウが安心しきった顔ですやすやと寝息を立てていた ーーー あぁ...そうか 昼寝をしようってユウと二人でベットに入ったんだっけ... まだ完全に覚醒しきっていない頭でそのことを思い出すと自然に笑みが零れてしまった 「寝すぎたな...」 赤く大きな夕日が窓いっぱいに浮かんでいて思っているより寝すぎてしまったことを後悔する .ーーーだけどいいか 傷つけるよりはマシなんだ 朝から少年の遊びに付き合って穏やかに一日を終えるなんていつぶりだろうと考える いつぶりなんて...ひょっとするとそんな日々はなかったのかもしれない 昼前に芽生えたなんとも表しにくいモヤモヤした気持ちも寝たら収まった気がする ミツルはホッとして少し自信がついた気がした 「こんな感じで過ごせばいいんだな...」 無意識につぶやいた一言も口に出すとなおさら背中を押されている気になった 「....」 「あ...起きた?」 寝ていたユウが自分と同じように西日に当たりまぶしそうに顔をゆがませて起き上がった時、なんだか笑ってしまった 「おはよ、寝すぎちゃったね、おなかすいた?」 サラサラの髪を撫でながら指先で横に流れる髪を耳にかける 「ごはん作るから、あっちに行こう」 ユウの腕を自らの首に巻き付けて抱き上げるとミツルは窓に向いカーテンを閉めに行った すると抱きかかえられたユウが窓に向って手を伸ばし始めた 「ぁ...あー...」 「なぁに?また鳥でもいたの?」 ユウが食い入るように窓を見つめるので彼は気になってよく見せてあげられるように窓に近づく するとユウは外の大きな夕日を見てしきりに何かを言おうと指を指した 「なに?まぶしいってこと?」 言いたいことが分からないミツルは適当に思いついたことを言ってみるけれど正解ではないらしい するとユウは急にハッとするようにして唇を小さく震えさせた 「ぅ...キレ...イ」 ミツルは思わず自分の耳を疑ってユウの顔を覗き込んで言った 「え...?今なんていったの?」 「ぅ?ぁー...キ...キ...うん、キレイ」 ユウは少し考えてから”キレイ”ともう一度言って、彼を見上げてニコッと笑顔を見せる 「すごい!すごいじゃん!ユウ!」 ミツルは驚くほど喜んで抱きあげているユウを揺らして何度も何度も褒めた 「やっぱり言えるようになるんだね」 ユウは自分が上手に言えたことも嬉しくて、また彼が想像以上に喜んで褒めてくれたのが嬉しくて口元がにやけてしまう 照れたようにミツルの胸に顔をうずめてチラリと見上げると嬉しそうに笑う彼と目があった その時、沈みかけた夕日が最後に照らす光がちょうど彼の笑顔にかかる ほんの少しだけまぶしそうに目を細めたミツルを見上げた時、ユウは思った ーーーなんてキレイなんだろう... それは”キレイ”を教えてもらった時に見た虹より、今窓から見えた大きな赤い夕陽よりもとってもキレイでキラキラしててなんだか泣きたくなるほどだった 「キレ...イ」 うん、でも沈んじゃったね、また明日見ようね」 そういってカーテンを閉める彼に抱きかかえられながらユウはまた泣きたくなってしまった ちがうのに ちがうのに ミツルはユウの気持ちなど気づかずに寝室を出ていってしまう 「何作ろうかな、ユウがまだ食べたことないものにしようね」 嬉しそうな声で笑い小さく聞こえる鼻歌をユウはただ静かに聞いていた

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