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拭った血と汗と体液と....ユウの身体にはいろんなものがベタベタとこびり付いていた 「ホント汚ねぇな」 ミツルは起き上がらせたユウの身体を眺めては顔を歪めている 「喉渇いてる?お水もってきたよ」 ミツルは水を張った薄いお皿のような容器を床に置いてみせた 「はい、飲んでいいよ?」 ユウは床に置かれた器とミツルの顔を何度も見比べてから這いつくばるようにして顔を近づけた 水も食事も取らせてもらえなくてとにかく喉が渇いていた 器を持つことは痛くてできなくて、床に置かれていることにはなんの疑問も持たずに舌をつきだした ピチャピチャと舐めるようにして器の水を啜っていく 「お前、ホント犬みたいだね、恥ずかしくないの?」 ミツルの嫌悪感をあらわにした声も聞こえないほど夢中になって飲んでいた 喉の渇きを止められれば、たとえ犬のようでも構わない そもそもユウは本物の犬を見たことがなかった だからこれがどれだけ非人道的な扱いなのかが分からない 水がなくなっても皿を舐めていると彼がふいにユウの髪に触れた 「....!」 髪を触られたことに驚いて思わず顔を上げると濡れた唇から顎を伝って雫が垂れる 親指で腫れて膨らんだ唇をなぞって手の平が頬にそっと触れる 包むようにピタッとされた手から大好きな人のぬくもりが流れ込んでくる 「ふっ...」 嬉しかった...触ってもらえた...やっと触ってもらえた 縋るような目がジワリと潤んで膜が張っていく 流すことができなかった涙がやっと零れ落ちそうになって、抱きつきたくて彼に腕を伸ばした けれど伸ばした腕は彼に触れることはなく、添えられた手はあっという間に離れてしまった 「ぁぅ...ぅ...」 触ってほしかった..もっと触って?頭を撫でて? 喉が渇くのと同じように優しくされることに飢えてしまっていた 「さっ!立って?汚いからお風呂に行こう」 ミツルはそう言うと急に立ち上がってユウも同じように立ち上がらせた けれど度重なる疲労からユウの足は絡まりぐにゃりと膝から崩れてしまう 「立てないの?ほら...立って?....ほら早く立てよ」 次第にイラついていくのが分かる 彼の声がだんだん強くなって怒鳴るようになってもユウの足はどうにも動かない 歩けない...立てない...足元をグラグラさせてミツルに掴まって立つのがやっとだった ミツルはそんなユウの胸ぐらをつかんで引き寄せる 持ち上げられて身体が徐々に浮いていく 「殴られて引きずられるのと自分で歩くの...どっちがいい?」 「ぁ....ぁ...」 「立てるよね?...行こっか」 射るようなミツルの瞳の中に捕まってしまったユウは感覚のない足をもつれさせながらヨロヨロと彼の後をついていった

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