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涼介の家に戻ってきてもマナトはなにもやる気は起きなかった 携帯はいつ鳴っても気づけるようにテーブルに置き、とりあえず持って帰ってきたコンビニ袋の中身を冷蔵庫にしまった プリンの消費期限は夜中の3時と書いてある 2人で食べようと買ったのだからせめてそれまでは待っていよう きっと今頃迷子になったユウが腹を空かせてどっかで蹲っているはずだから マナトがリビングの一面に広がる窓から外を見下ろしてみると、そこには誰もがうっとりするような夜景が広がっていた まさに宝石箱の中身を散りばめたような景色は見るもの全てを魅了する そしてその全てを一望できるその場所に今は自分がこうしていることになんだか違和感を感じた こんな夜景の裏にも実は食べる物や寝る所に困っている奴がいたりする それはほんの少し前までの自分であり、それが今はこうして見下ろす場所にいる事が不思議で仕方ない あの頃の自分はこんな未来があるなんて思っていなかった 見上げるだけの人生はそれが惨めだなんて気づく事すら出来ないほど何もなかった 「ユウ...」 ガラスに指先を合わせると情け無い自分の顔に気づかないふりをしながら見えるはずもないユウの姿を探していた ーーやっぱり、邪魔しないから戻りたいって言おうかな これ以上1人でいるのは耐えられないと机に向かうとそこでタイミングよく携帯が震えた 「...っ」 マナトは携帯に飛びつき、画面を確認するとそこには電話ではなくメールの表示が付いていた てっきり涼介から電話だと勘違いした事に誰にぶつける事も出来ない苛立ちを滲ませながらメールを開く するとそこに表示された差出人には「樹」の文字が浮かんでいた 「なんだよ...」 舌打ちしながら肩を落としぶつぶつと文句を垂れる 「今、それどころじゃねーし...」 メールの内容がなんであれ、今は考える事もましてや返信する気になどなれはしない しかし、渋々開いた画面にはなんの文字も見つけられない あるのは添付ファイルのみ 「...?」 深く考えもせずマナトはそのファイルを開くーー 「あっ...やぁっ...」 真っ暗な映像と共に聞こえるのは誰かの荒い息づかい 画面はグラグラと揺れ、被写体を上手く収めようと上へ下へと移動していく 「なんだ...?これっ...」 そしてようやく画面が映し出した姿にマナトは息を止めた そこに映っていたのは目を覆いたくなるほど傷つけられたユウの姿だった

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