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**** オフィス内では未だ行方の分からなくなったユウを探して慌ただしく動き回る椎名達の姿があった いつのまにか日はとっぷりと暮れて、これ以上は自分達だけでの捜索は無理がある そろそろ公的な手段に頼らざる終えない所まで来ていた 「僕のせいだ...ユウくんに何かあったらっ...」 真っ青になった椎名は嫌でも湧き上がってくる不吉な予感に頭を抱えていた 「落ち着けよ。どうせ迷子になってるだけだって。今、知り合いの警察に連絡入れといたからきっとすぐに見つかる」 それでも先程から涼介のタバコの本数は増えるばかりだ これが単なる迷子なのか、事故なのか、あるいは事件なのかはまだ分からない けれどユウの性格ではいつ何に巻き込まれても不思議ではないと危惧していた部分もたしかにあった だからできる限り注意していたつもりだったのに... 「ミツルには連絡したか?万が一、あいつがって事もあるだろ?」 涼介の問いかけに椎名は項垂れながら首を横に振る 「してみたけどいなかった。まだ見つからないようならこっちには来るって...あぁ、ミツルくんにどんな顔すればいいんだ...」 マナトはイスに座りながらそんな2人の様子を眺めていた テーブルには昼間に買ったまま手付かずになったコンビニの袋が無造作に置いてある せっかくユウと食べようと思っていたはずのプリンが今ではすっかりぬるくなってしまった 何やってんだよ...ユウの奴 こんなにみんなに心配かけて.... それでも時間が過ぎるたびにマナトにも不安が積もり始めてくる あの時、ユウと一緒に公園へ行っておけばこんな事にはならなかったんじゃないか 買い物なんてすぐ終えて早く向かえばこんな事にはならなかったんじゃないか 今、この場にいる誰もが自分自身を責め始めた頃、涼介が思い出したように腕時計を眺める 「マナト、お前はもう遅いから先に帰ってろ」 「えっ!?」 突然の事にマナトは一瞬言葉を失った こんな時間まで一緒に探して、挙句まだ見つからない状態で帰れるわけがない 「帰れるわけないじゃんっ!俺も探す!!」 「あのなぁ...こんな真っ暗で探しに出でお前までいなくなったらどうすんだよ」 「知るかっ!!俺はガキじゃねえっ!!」 まるで自分だけ除け者のような扱いにマナトは納得がいかず、涼介に食ってかかる するとそんなマナトに返って来たのは今まで聞いたことがないほど弱々しい涼介の言葉だった 「お前の気持ちは分かるけど...これで本当にお前までいなくなったら俺たちたまんねぇよ」 いつもなら"邪魔だからだよ!バカ!"と罵声が飛ぶはずだ 上から目線で威圧的で自信家の涼介 こんな風に人に頼み込むような言い方をする男じゃない そんな男がこんなふうに大人しくなるのはそれ程までにユウがいなくなったことが堪えているからだ 「な?頼むから。必ず連絡いれるから、家で待っててくれよ」 切なげな目で懇願されてはマナトも返す言葉が見つからなかった 今は自分のワガママを言ってる場合ではない 「わかっ...た」 マナトは仕方なく頷き、涼介達を残したまま部屋を後にした

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