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白い部屋の闇の中

どこまでもどこまでも追いかけてくる黒い影 捕まってしまったら最後....もう二度と戻れなくなってしまう 「やぁっ.....」 どうしてもっと早く走れないんだろう どこまで走っても暗闇は晴れなくてどこまで行っても出口はなかった 「やだっ...やぁっ....」 嫌だ ここは嫌い 助けて...誰か助けて..... みぃくん、たすけて..... 「ユウ!!」 勢いよく身体を揺すられると、ユウは夢から現実に引き戻された 「はぁっ...はぁっ....」 まるで今まで息をしていなかったみたいに、空気を求めて胸いっぱいに吸い込む 身体にはびっしょりと汗をかき、胸がドキドキと脈打っていた 「ユウ、大丈夫?怖い夢見た?」 「みぃ....く...」 真っ青になったユウを抱き寄せてミツルは背中を優しく擦る 少しでも落ち着けるようにトントンとリズムを付けてやるとユウはゆっくりと正気を取り戻していった 「落ち着いた?」 「ぁっ......あの.....」 ミツルを見上げたユウはホッとしたように胸に寄りかかり、彼の姿が現実かどうか確かめるようにしがみついていた ーーユウはあの日から入院している 幸いケガの程度は大したことはなかったが、目覚めた当初、ユウには少し記憶の混乱が見られ、まともに会話できる状態ではなかった もともとうまく話せないユウからその理由が外傷的なのか精神的なのかを判断するのは難しく、そのため大事をとって入院という事になったのだ ユウはあの日以来、夜もまともに眠ることができず、日中ようやく眠る事が出来てもすぐにうなされて起きてしまう日々が続いていた ミツルはそんなユウのために足繁く病院に通っては甲斐甲斐しく世話をしているのだ

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