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泣きじゃくり立つ事さえ出来なくなったマナトを抱えて涼介はソファに座らせた
引きつけを起こすほど思い詰めたマナトの姿に涼介はどこか安心するような気がした
きっと今までのマナトならユウがどうなろうと関係ない
これがチャンスとばかりにその席を奪おうと画策していただろう
けれど今、目の前で泣いているのは後悔に苛まれ行き場所をなくして彷徨う子供だ
変わりたいと願い、不器用ながらに努力し始めたマナトを一体誰が責める事ができるのだろう
「マナト、俺の目を見ろ」
「っ...くっ...ひっく....」
未だ泣き止まないマナトは聞こえていないのか下を向いたままグズついている
それを無理やり自分に振り向かせると涼介は両手でマナトの顔を挟んで上を向かせた
「顔を上げろ、バカ」
そして涼介は真っ直ぐな目でマナトを見つめるとはっきりと告げた
「いいか?よく聞け!お前は何も悪くない」
「...っ」
無理やり合わせられた視線は逸らす事を許さず、マナトは目を見開いた
「お前が頑張ってきたのを俺たちは見てる。だから誰1人お前を責める奴はいない。まともにやってない奴が努力してるお前の足を引っ張るなんてふざけてるだろ」
そしてマナトの目元を指で拭うと涼介は続けた
「何も心配しなくていい。お前は全部俺に預けてここに居ればいいんだよ、バカな事考えんな」
"ここに居ればいい"
それはマナトが何よりも欲しかった言葉だ
涼介の飾り気のない言葉はなによりも率直に胸に響いてくる
「つーかあいつらの元に帰せるわけないだろ。お前俺が言った事忘れたのか?」
ぽかんとするマナトに涼介はふっと笑って額を弾いた
「お前がちゃんとするなら俺は何が何でも守ってやるって言っただろ?」
それは涼介がくれたきっかけだ
フラフラしている自分に役割を与え、居場所を作ろうとしてくれた
涼介は自分を信じてくれているのだ
こんな自分を...側に置いておく価値もない自分を信じて守ろうとしてくれている
とても喜べる立場にないくせにマナトはそれが嬉しくて、だけどやっぱり申し訳なくてまた胸にこみ上げる
「....っ」
すると間髪入れずに涼介は「泣くな!!」とマナトを自分の胸に引き寄せた
「俺が泣かせてるみたいじゃねえか」
そう言って軽く舌打ちしながらも宥めてくれる涼介の胸でマナトはしばらく泣き続けた
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