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二人を助けたい理由 この言葉にならない気持ちをどうやって伝えあげたらいいんだろう ミツルの身を案じる義務もユウを引き取る責任も本来なら椎名にはないからだ 彼は椎名に引け目を感じていて、本当に信頼してもいいのだろうかとまだ不安があるようだった 不安定で脆い彼の心にシンプルに響く言葉はなんだろう...と椎名は考える 椎名が言葉を選んでいると急に彼のシャツが引っ張られて声が聞こえた 「みぃくん」 起こしてしまったかと慌てて二人でユウの顔を覗きこむと、どうやら寝言だったようだ むにゃむにゃしながらも、瞼はしっかりと閉じられている 「みぃ....」 「なんだよ、寝言なんて...」 ミツルは呆れたように笑ってユウの前髪をかきあげる すると今度はふにゃっと頬を緩めて嬉しそうに笑っているように見えた 寝ても覚めても彼のことばかりのユウに椎名も思わず笑ってしまった ミツルと同じようにユウの髪に触れて一つ頷いた 「本当にかわいいね、ユウくんにはやっぱり笑顔が似合うね」 いつもニコニコしてくるくる表情を変えて、彼にだけ向けるとびっきりの笑顔 「そういうの守ってあげたいと思うよ、ユウくんの願いを叶えてあげたくなる」 「ユウの願い?」 「ユウくんの願いは君とずっと一緒にいることだよ」 二人を助ける理由はこれだと思った 彼のことだけを見ているユウを救うことは彼を救うことにもなる ミツルが立ち直ればユウの笑顔を守ることなる 「叶えてあげたい....叶えてあげよう?」 そしてそれを僕にも叶えさせてほしいーーー 椎名がそういうと彼は無言のまま腕で目元を抑える 「大丈夫だよ、君は絶対に大丈夫」 椎名の言葉に彼は静かに肩を震わせ顔を抑えたまま頷いた

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