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ユウは慌てたような顔で咄嗟に椎名の陰に身を隠してしまった
「ユウ?どうしたの?怖い?」
「ユウくん...?」
椎名の後ろでユウは首を左右に振って「イヤイヤ」と何かを訴えている
よく見ると自分の首輪をぎゅっと掴んで盗られまいと握っているみたいだ
「バカ、そんなのいつまで付けてんだよ」
椎名の後ろに回り込んで捕まえると仰け反るようにして抵抗してくる
「ユウってば...」
”いい加減にしろよ”と言いかけたときユウは涙目で声を上げた
「やぁっ!!ユウ...のっ!!」
首輪を掴んだまま必死になって伝えてくる
「みぃくん...ユウの...ユウの」
これはユウのだから取らないでーー
ユウは初めて彼からもらったこの首輪を大事にしていたのだ
取り上げないでほしいと訴えて硬く握った手を緩めない
大事にする価値もないものがユウにとっては宝物だった
「バカ...お前本当にバカだよ」
そんな二人を見ていた椎名が声をかけた
「ミツルくん、ちゃんとユウくんに話してあげたほうがいい」
「話...?なんの?」
「これからしばらく一緒にいられないんだよ?それがどうゆうことなのかちゃんと説明してあげて」
説明って...どうやって何を言えばいいんだろう
言っても分かりはしない...それに自分の口からそれを告げたくはなかった
分かりやすく言えばそれだけ自分も重い真実を直視しなきゃいけなくなる
「でも...言ったって分かんないよ」
「それでもっ!言わないとダメだよ」
椎名の語尾が強くなる
「もう二度と自分が捨てられたなんて思わせないで?今は分からなくてもいつか分かる時が来るから」
「.....分かった」
椎名にまるで頼み込むように言われた彼はしぶしぶ首を縦に振る
「ユウ、ちょっとこっちにおいで?」
ユウの肩を抱くとビクンと身体を跳ねさせて、恐る恐る彼を見上げてきた
まだ首輪を取られると思っているみたいだ
バカだな...そんなものが大事だなんて...
だけどそんなユウだからすごくすごく可愛いんだ
彼はふっと笑うとユウの手を優しく引いた
「俺と少し話をしよう?そんなものよりもっといいものをあげるから」
そういって彼はユウを寝室に連れて行った
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