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「みぃ...くん」 連れられてきた寝室でユウは不安気に目を泳がせた 「怒ってないよ、座って」 ユウをベットに座らせるとミツルはその左側に自分も腰を降ろす そしてそっと左手に触れると、自分の手の指と絡めて繋ぐ 小さな手がそれに答えるようにきゅっと力が加わった 「ユウ、あのね...」 2人っきりの寝室 やけに自分の声が響いたような気がする 繋いだ手から言いたいことが伝わればいいのに... 何をどう言えば泣かせることもなく、笑顔を絶やすこともなく、納得してもらえる言い訳があるんだろう 「えっと...」 傷ついてたユウを守るためにこれからは先生と暮らすんだよ 「あ...あの...あのね...ユウ」 好きだから離れるんだよ...嫌いになったから手を離すわけじゃない そう、ちゃんと言わないと... 今は理解できなくてもいつか分かってくれる日が来る 「あのね...ユウはこれから先生と一緒にいるんだよ」 「....?」 「これからはね、ユウのことは先生が守ってくれるからなにも心配しなくていいからね」 易しくユウでも分かる言葉を選ぶのは大変だ もっと一つでも多く、話が分かるように教えてあげればよかった そう思いながら、心のどこかで理解できない事にホッとしている自分がいる どこまで行っても俺は卑怯だーー 「ユウは先生が好き?」 ミツルの言葉に反応してユウは目をパチパチと動かした 「もう、我慢しなくていいよ、好きなものは好きだって言っていい」 「....」 「先生の事好き?」 「....」 「好きならちゃんと言って?」 もう好きなものを我慢してほしくない なんでも欲しがって望むものを手にして、当たり前の事ができるようになってほしい 自分にはそれが許されているんだと知ってほしい 「ユウ...?」 もう一度聞くとユウは困ったような顔で、小さくコクンと頷いた 「そっか、良かった、それなら心配ないね」 自分の前で他のものを好きだという事はとても勇気がいる事だったと思う ミツルは微笑んでユウの頬を摩るとそのままその手を首元へ滑らせた

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