3 / 3
第3話 真っ赤なハート
ボクのハートは、ずいぶん前に盗まれてしまった。
今ではぽっかりと、ハートがあった場所に穴が空いてしまった。
初めて好きになった奴は盗人で、当時の純粋すぎるボクはそんなこと気付かなかった。
いいように弄ばれた過去は、馬鹿みたいにヘラヘラしただらしないボクの顔。
奴は純粋でピカピカしたボクのハートを盗み、売り捌いたのだろう。
世の中の腐った奴らにとって、純粋なボクのハートはさぞ高値を出しても欲しくなるモノ。
ハートを盗まれたボクは、ほんとなら盗まれたボクのハートを返して欲しい。
けど、今では当時のボクよりも、もっと綺麗で真っ赤な誰をも魅了するハートが欲しい。
たとえその赤の意味がどんなモノであっても、今のボクには関係ない。
そうら、ハート売りがボクに声をかける。
髪を後ろに撫で付け、胸元がはだけた派手なスーツ、サングラスをした目元は見えず、ニヒルに歪む口元。
「真っ赤なハートはいかが?」
男の手には透明ガラスのケースに入った、一度見たら目を離せなくなるほどの真っ赤な、滴るようなハートがあった。
いったいどこの誰のハートだったんだろう……まあ、そんなことはどうでも良い。
それはもう「商品」なのだから……
ともだちにシェアしよう!