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第3話 真っ赤なハート

ボクのハートは、ずいぶん前に盗まれてしまった。 今ではぽっかりと、ハートがあった場所に穴が空いてしまった。 初めて好きになった奴は盗人で、当時の純粋すぎるボクはそんなこと気付かなかった。 いいように弄ばれた過去は、馬鹿みたいにヘラヘラしただらしないボクの顔。 奴は純粋でピカピカしたボクのハートを盗み、売り捌いたのだろう。 世の中の腐った奴らにとって、純粋なボクのハートはさぞ高値を出しても欲しくなるモノ。 ハートを盗まれたボクは、ほんとなら盗まれたボクのハートを返して欲しい。 けど、今では当時のボクよりも、もっと綺麗で真っ赤な誰をも魅了するハートが欲しい。 たとえその赤の意味がどんなモノであっても、今のボクには関係ない。 そうら、ハート売りがボクに声をかける。 髪を後ろに撫で付け、胸元がはだけた派手なスーツ、サングラスをした目元は見えず、ニヒルに歪む口元。 「真っ赤なハートはいかが?」 男の手には透明ガラスのケースに入った、一度見たら目を離せなくなるほどの真っ赤な、滴るようなハートがあった。 いったいどこの誰のハートだったんだろう……まあ、そんなことはどうでも良い。 それはもう「商品」なのだから……

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