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第22話

「ああぁ」  耳の奥まで聞こえる水音。逢坂の舌が鼓膜の中へ入ってくるのも恥ずかしいが、聴覚が卑猥さを感じて、恥ずかしくなる。  意識している訳ではないのに、腰まで浮いてきて、どうにかなってしまいそうな気持ちだった。 翻弄される陣内に逢坂は首筋に噛みつくように唇で吸う。吸われた跡には淡い赤色が陣内の肌の色に映えた。 「まだ……もっと、もっと君を……」  熱っぽく、囁かれる言葉に陣内はベッドに倒されて、下着が膝へとずらされる。  以前はお互いに望んでいない形だったが、今は違う。  逢坂に躰を触れられ、重ねられる。近づいてくる逢坂が美しすぎて、直視は難しいものの、陣内は何とも言えない幸福感で満たされる。 「先生……」 「何?」 「好きです」  まだ好きという事を知り始めたばかりの陣内は深く目を瞑る。  多分、良い事ばかりではないだろう。  もしかしたら、逢坂の言っていた通り、一時の感情の昂りかも知れない。あるいは、「好き」は「好き」でもその名を借りて、どろどろとした感情に変わっていってしまうかも知れない。  ただ、好きという事、愛するという事……他にも沢山の事を逢坂の傍でもっと知りたいと陣内は思うのだ。 「もっと教えてください。先生」 「ああ、俺で良かったら」  いつだったか、逢坂は「痛みをなくす事はできない。全てを分かってあげる事も多分、できない」と言っていた。  それでも、彼らは共に生きていくだろう。  共に、痛みも全ても分け合って。歩み寄るようにして、生きていくのだろう。

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