22 / 22
第22話
「ああぁ」
耳の奥まで聞こえる水音。逢坂の舌が鼓膜の中へ入ってくるのも恥ずかしいが、聴覚が卑猥さを感じて、恥ずかしくなる。
意識している訳ではないのに、腰まで浮いてきて、どうにかなってしまいそうな気持ちだった。
翻弄される陣内に逢坂は首筋に噛みつくように唇で吸う。吸われた跡には淡い赤色が陣内の肌の色に映えた。
「まだ……もっと、もっと君を……」
熱っぽく、囁かれる言葉に陣内はベッドに倒されて、下着が膝へとずらされる。
以前はお互いに望んでいない形だったが、今は違う。
逢坂に躰を触れられ、重ねられる。近づいてくる逢坂が美しすぎて、直視は難しいものの、陣内は何とも言えない幸福感で満たされる。
「先生……」
「何?」
「好きです」
まだ好きという事を知り始めたばかりの陣内は深く目を瞑る。
多分、良い事ばかりではないだろう。
もしかしたら、逢坂の言っていた通り、一時の感情の昂りかも知れない。あるいは、「好き」は「好き」でもその名を借りて、どろどろとした感情に変わっていってしまうかも知れない。
ただ、好きという事、愛するという事……他にも沢山の事を逢坂の傍でもっと知りたいと陣内は思うのだ。
「もっと教えてください。先生」
「ああ、俺で良かったら」
いつだったか、逢坂は「痛みをなくす事はできない。全てを分かってあげる事も多分、できない」と言っていた。
それでも、彼らは共に生きていくだろう。
共に、痛みも全ても分け合って。歩み寄るようにして、生きていくのだろう。
ともだちにシェアしよう!