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One night-3

「……司って、悪趣味なところがあるね」  責めてるわけでもなく、圭人はぽつんと呟いた。大人げなかった、と少し後悔しながらそれは伝えずに司は腕の中の圭人を抱きしめ直した。 「それで? 嫌いになったかい?」 「……まさか」  くぐもった声と少しせわしない呼吸が胸をくすぐる。圭人の髪の中に手を差し入れ頭皮を撫で上げた。くすぐったそうに圭人が身を捩る。 「言いたくなかった」 「え?」 「だって司はもう「初めてじゃない」って決めてるんだもの」 「…………」  圭人の計画通り司は動いて彼のものになった。司が手に入れたのではない。その現実は司に取って決して面白くはないことだ。結果よければ、の話ではあるが、「初めて」にこだわるのは含みを持たせてばかりいる圭人に対しての意趣返しなのかもしれなかった。 「……でも」 「ん?」 「僕も、楽しんだ、かも……」 「圭人」  目元を赤く染めて大胆な言葉を吐く圭人の首筋をぎゅっと抓む。あっと楽しそうな声を上げて圭人は司にしがみついた。 「でもね、司。本当はね」 「え?」 「…………だよ」  ひっそりと耳に流し込まれた言葉。それを反芻して司はにやりと笑った。額に自分のそれを擦りつける。 「やっぱり君には負けるよ。圭人。俺は本気で君に参ってる」  おもむろに上に乗り上げて強く抱きしめる。圭人の腕が縋るように背に回され、深い口付けを交わす。司の手がシーツをたくし上げ、ベッドの中に沈み込んだ。煌めくシャンデリアの下で熱く互いを求めあう二人の夜は、まだ終わらない。 Fin.

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