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18 恋?
「竜、お前それ……きっと恋してるんだと思う」
「え? 僕が周さんに? 男同士だよ?」
康介が突拍子も無いことを言い出したと思った僕は可笑しくなって笑ってしまった。
「男同士でもなんでも、好きな気持ちは関係ないと思うよ」
思わず笑ってしまった僕とは対照的に康介はいたって真面目な顔をしてそう続けるから、僕は少し考える。このモヤモヤした気持ちが康介の言う「恋」なのかどうか、考えたところで僕にはわからない。でもなぜだか凄く嬉しそうな康介を見ていたら、不思議と気持ちが晴れてきた気がしてすっきりした。
今日からまた一週間が始まる──
まだちょっと周さんのことでもやもやするけど、僕はいつも通りに学校に向かった。登校途中に康介と会うのもいつものこと。でも今日は陽介さんも一緒だった。
「竜太君、こないだはゴメンね」
「えっと、何がです?」
「あの……ほっぺにさ」
陽介さんは康介を押し退け僕の隣に来ると、酷く気まずそうにそう言った。
そうだった。あの後の衝撃的なことのせいですっかり忘れていたけど、あの時僕は陽介さんに頬っぺにキスをされたんだっけ。
「俺、酒入るとちょっとキス魔になっちゃうらしい。竜太君、可愛くてついね。あの後周にベタベタ付き纏われて困ってたみたいだったし、あんまりこういうの慣れてないよな……って思ってさ。ほんとごめんな」
僕はそんなこと忘れていたくらいだし、謝られるようなことじゃ無い。
「大丈夫です。わざわざありがとうございます」
「あ! でもね、俺、キス魔って言っても口にはしないよ? 口にキスできるのは大事な人だけ。どんなに酔っててもね……これ大事」
妙なテンションで陽介さんはそう言うと、一人で勝手に納得してウンウンと頷いた。そもそも大事な人がいるなら、ほっぺにキスもダメなんじゃ? そう思ってすぐ、僕は気がついてしまった。
「もしかして陽介さん、大事な恋人がいるんですか?」
陽介さんは格好良いから、きっと可愛い彼女がいるのだろう。だからこんなことを言っているんだ。陽介さんの彼女って一体どんな人だろう? と、思う間も無く陽介さんは元気にこう言った。
「うん、いるよ! 圭ちゃん 」
「え─?」
「え──?」
さっきまで僕らの会話を黙って聞いていた康介も、驚いて僕とハモるように雄叫びをあげた。驚いている僕らをよそに、陽介さんは用事があるからと言いさっさと行ってしまった。
陽介さんの発言に僕と康介はびっくりして顔を合わせる。
「ねえ康介……知ってたの?」
「兄貴がキス魔なのと、大事にしてる彼女がいるとは知ってたけど、いやまさかそれが圭さんだったなんて……」
陽介さんの恋人があのカッコいいボーカルの圭さんだったということも驚きだけど、そもそも男同士だというのに何の躊躇いもなく僕らに話す陽介さんに驚いてしまった。
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