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20 その頃の康介と修斗さん

 あっという間に竜は周さんに連れられて行ってしまった。あまりの勢いに俺はただ唖然とする。とりあえず竜の置いていった弁当を膝に乗せ、目の前にいる修斗さんの方を見た。修斗さんは周さんを追いかけて来たのか息を切らせてゼーゼー言ってる。ライブの時、修斗さんとはあまり話しができなかったんだよな……と、内心今のこの状況をラッキーだと思っていた。 「まったくもう……なんなんだよ」 「修斗さん、大丈夫ですか?」  修斗さんはいつもにこにこしてて優しそうなんだ。オシャレだし誰とでも気さくに話しているのを知っているから、俺なんかでもきっと優しく接してくれる。  憧れの先輩── 「ああ、悪りいな。友達、竜太くんだっけ? 周のやつさ、竜太くんの事えらく気に入っちゃって。見たところ竜太くんて人付き合い苦手だろ? あんな風にされて周のこと怖がってないか?」  修斗さんの言う通り、竜は人と接するのが苦手なタイプだ。でも、竜は周さんのことを怖がってるというより戸惑っている、という感じかな。俺は修斗さんが竜のことを気遣ってくれてるのがわかって嬉しかった。 「修斗さん、修斗さんの言う通り竜って俺以外の人間に自分から話しかけるの出来ないんすよ。いつも一人でいることが多いし。でもね、最近よく笑うようになったし高校入ってからはだいぶ良くなったんです。でもこないだのライブの時の周さんの行動は、竜のキャパ超えちゃった……みたいな感じで正直戸惑ってます。でも、きっと大丈夫ですよ。驚いてはいるけど、周さんのこと嫌がってはいないから」 「康介くんて、いい奴だね。あ! ねえそのお弁当美味しそう! ちょっとちょうだい!」  修斗さんは俺の話をさらっと流し、竜の弁当に手を伸ばす。どうせもう戻ってこないだろうと思ったから、俺は修斗さんと一緒に残りの弁当を平らげた。  ちょっとびっくりしたけど、周さんと竜のおかげで俺は憧れの修斗さんと楽しく昼休みを過ごせて嬉しかった。

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