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突然の訪問者
「あれ? 今日は康介君と一緒じゃないの?」
僕を見て修斗さんが不思議そうな顔で聞いてきた。そうだよね、いつも僕は康介と一緒だったから……周さんは我関せずな感じで、もぐもぐと焼きそばパンを頬張っていた。
「なんか康介、今日変なんです……眠いって言ってたけど、なんか元気ないっていうか、不機嫌っていうか……お昼も気がついたらいなくって、だからとりあえず僕一人で来たんです」
いつも元気な康介が、今日はちょっと様子がおかしい。
「そう……それは気になるね。どうしたんだろう?」
修斗さんも僕の言葉に心配そうな顔をする。周さんは僕と修斗さんを見ながらパンをもぐもぐ。ごくんと飲み込むと盛大に溜め息を吐いた。
「俺は竜太がここにいればなんも問題ないし。康介だってたまには考え事くらいあんだろ。あんま気にすんなって」
周さんの言う通りだ。康介だってそんな時もあるよね。
気にするの やめよう。焼きそばパンを食べ終えた周さんは僕の横にぴたっとくっ付いてきた。
「竜太、なんか久しぶりだな。旅行以来だ……」
僕の顔を覗き込むように見るから恥ずかしいけど、僕も久し振りに周さんと会えてとっても嬉しい。寄り添いながら話をしていると突然影がおり、人の気配に顔を上げる。そこにはにっこり笑った志音が立っていた。
「竜太君、こんなとこにいたんだ」
びっくりして黙っていると、続けて志音が喋り出す。
「あれ? こちらは? 一年生……じゃないですよね? 先輩かな?」
「あ、二年生の橘先輩と谷中先輩……」
志音が二人にペコっと頭を下げるけど、周さんも修斗さんも何も言わない。なんだろう……ちょっと気まずい。
「俺、竜太君と同じクラスの結城志音です。竜太君、先輩方と一緒にお昼なんて、珍しいね」
「別に昼くらい誰と食べたっていいだろ。何だよお前、邪魔すんなよ」
急に周さんが志音に食いつく。そんな言い方しなくても……と僕は焦ってしまった。だってきっと志音も気分悪くしたら周さんにキツイこと言いそうだったから。
「ごめんね。志音君って言ったっけ? 周、いつもこんな口調なんだよ。気にしないでね。またね」
修斗さんは周さんのフォローをしつつ、志音に向かって手をひらひらさせる。追い払う動作……だよね。志音もこれ以上しつこく居座るようなことはせず、「じゃ、今度は俺もご一緒させてくださいね」と言いながら行ってしまった。
屋上の入り口を見ると康介が入ってくる。志音と入れ替わるようにこちらに向かってやってくる康介は不思議そうに志音を振り返りながら歩いて来た。
「ねえ、志音も一緒だったの? 」
「まさか! 急にひょっこり来たんだよ、びっくりしちゃった」
明らかに不機嫌そうな周さんが口を挟んだ。
「なんなんだ? あいつ……」
「俺、周に負けないくらいデカイやつ久々に見た。志音君、凄いイケメン君だったね」
周さんとは対照的に楽しそうな修斗さんは笑ってる。確かに志音も周さんに負けないくらい背が高い。威圧感で言っても、いい勝負だ。
「志音、僕のクラスの転校生なんです。モデルの仕事をやってるって言ってましたよ」
僕が言うと、修斗さんは「なるほどね」と頷いた。
「ところで康介、どうしたの?」
なんか元気なかったし、来るのも遅かったし気になってしまった。さっきは何処に行ってたんだろう。
「いや、別に……今日は竜は屋上行くと思ったから購買に行ってパン買ってた。購買めっちゃ混んでるから遅くなっただけだよ」
いつもと変わらない様子で康介がそう言ったから、本当に何でもなかったのかな?
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