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救出 康介が見た光景

周さんを引っ張って、俺は視聴覚室まで来た。 「誰かいんのか? 静かじゃね?」 周さんがそう言いながら、ズカズカと中に入った。静かだけどやっぱり奥の方で人の気配がする。俺は周さんの後に続きながら、ある物に気がついた。 これって! 「周さん! これ……修斗さんの! ねえ、修斗さんの?」 俺の手から周さんが勢いよくそれを奪う。 「修斗のブレザーだ…… 」 怖い顔をした周さんが間違いなくそう呟いた。 俺はもう居ても立っても居られずに、奥の準備室へ走った。扉を開けて中を見るも、そこには誰もいなかった。 「いない……?」 いや、奥だ! 奥から話し声が聞こえてくる。 「……修斗、超かわいいよ! もっと喘げ! ここももっと解して、すぐに俺のぶっ込んでやるからな! ほら、どうだ? 気持ちいいか?」 確かに誰かが喋っている。……何やってんだ?準備室のさらに奥、そこまで進んで見えた目の前の光景に思わず息を飲んでしまった。 は……? ぐったりとしている半裸の修斗さんを何人もの男が寄ってたかって押さえつけ、そのうちの一人が修斗さんの足を持ち上げ、まさに今、無理矢理挿入しようとしているところだった。 嘘だろ? これって、レイプじゃん! ふざけんな! 「何やってんだよ! 修斗さんから離れろ!」 俺は無我夢中で周りの男共を蹴散らして、修斗さんに俺のブレザーをかぶせた。 「修斗さん!!」 修斗さんは意識がないのか目を瞑ったままピクリとも動かない。 嘘だろ? 嘘だ! ……何でこんなことに! 「周さんッ! 修斗さんが!」 どうしたらいいのかわからず周さんを呼ぼうと振り返ると、小峰が周さんにぶっ飛ばされてるところだった。 「え? なんで小峰? 」 周さんは小峰が落としたビデオカメラをガシガシと踏みつけ、木っ端微塵にしている。そしてぶっ飛ばされて倒れてる小峰の髪の毛を掴み、持ち上げた。 「………… 」 こんな怖い顔の周さん、初めて見た。 「てめぇ、何してくれてんだよ!」 そう言いながら周さんは小峰の顔面に頭突きをかまし、また小峰は後ろに吹っ飛ばされた。小峰はそのまま動かなくなったから、きっと気を失ったんだろう。なんで? と疑問が湧いたけど、そんな事より修斗さんのことで頭がいっぱいで俺は半分パニックになってしまっていた。 「周さん! そんな事より修斗さんが大変! 修斗さん、起きないんだ!」 俺が叫ぶと、周さんは窓のカーテンをベリベリっと剥がし、修斗さんを手早くぐるぐる巻きにする。そしてヒョイっと優しく抱きかかえて、スタスタと歩き始めた。 え? ……え? 「何やってんだよ周さん? おい! どこ行くんだよ!」 俺は周さんに詰め寄った。 「…保健室! ……多分こいつ、何か盛られたんだ」 周さんの言葉を聞き、急に怖くなり膝が震える。それでも俺は必死に周さんについて行き、保健室まで辿り着いた。 「……先生いる? 修斗がやられた。ベッド貸して」 周さんが高坂先生の返事も待たず、ベッドに修斗さんを寝かせる。 修斗さん、目を覚まさないし全然動かない。ねえ、生きてるよね? 大丈夫だよね? やべえ、泣きそう…… 「どうしたの? 修斗くんがやられたって…何? 何された?」 高坂先生は深刻な顔で周さんに聞いた。 修斗さん……男にレイプされてた。 酷く胸が痛い。信じらんねえ…… 「男にやられそうになってたけど、すんでのとこで康介が止めに入って大丈夫だったと思う。体にも傷はなかったし。それよか、なんか薬盛られたみたいで意識がねえんだよ」 周さんが簡単に説明した。どうしてあんな事になってたのか、なんでなのか、俺は今見たことしかわからない。でもこうなったのは俺のせいだってことはわかる。どうしたらいい? 俺はどうすれば…… 「わかった診てみるよ。処置するから……」 そう言って、高坂先生はカーテンを閉めた。周さんはそれを見届けると「よしゃ、行くか」と保健室から出て行こうとするので、慌てて俺は引き止めた。 「ちょっと周さん? どこ行くんですか?」 周さんはそんな俺の顔を見て、にっこりと笑う。 「どこって美容院 」 ……? 俺は正直、周さんに殺意が芽生えた。こんな時に何言ってんだ、この人は! 美容院だと? はあ? 怒りでワナワナしている俺にも構うことなく、周さんが続けた言葉に俺は絶句した。 「大事な記念日に向けて俺は身嗜みから整えるんだよ。修斗はお前と高坂がいるから大丈夫だろ? よろしくな」 そう言ってご機嫌で周さんは保健室から出て行った。

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