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馬鹿な康介

僕の部屋で康介は黙りこくったまま…… 「康介? 何があったの? 話せない?」 僕は康介にゆっくりと聞いてみる。 涙は止まったみたいだけど、悲痛な表情は変わらなかった。 言いたくなければ言わなくていい……そう喉まで出かかってしまったけどそれは違う。あんなにみんなに心配かけたんだ。特に修斗さんにはちゃんと話をするべきだと僕は思ったから、それを伝えた。 「昨日の朝、小峰君とどこかに行ってから家に帰ってないし連絡だって取れなくて、みんな凄く心配たんだ。修斗さんだって…… 」 修斗さんの名前を出した途端、康介はまた泣きそうな顔で僕を見た。 「修斗さん、康介が小峰君と消えたってわかったら飛び出して行って……あてもないのに必死に探してたんだよ。あんなに汗かいて髪乱して…… すごい心配してたんだからね!」 僕が修斗さんの様子を話すと、とうとう康介は泣いてしまった。 「……大丈夫だって康介は言うけど、僕には大丈夫なようには見えないんだよ……康介、本当は大丈夫じゃないんでしょ?」 そう聞くと、やっと康介は口を開いた。 「俺、修斗さんに合わせる顔がないんだ…… 修斗さん襲ったのは僕じゃないって、泣きながら誤解だって訴える小峰を俺は信じちゃったんだ……馬鹿だよ本当。まんまと騙されてさ……転校するから最後の思い出にデートしたいなんて言われて、ほいほいとオッケーしてついてったんだ……」 ぽろぽろと涙を落としながら康介は話してくれた。 そうだったんだ……康介は優しいから。 「修斗さん襲った奴と一日中楽しく過ごしちゃってさ、俺……馬鹿みたいだ。絶対許せないのに…てか、俺自分が許せない。……せっかく修斗さんと仲良くなれたのに……幻滅されるよな」 康介…… 自分の体をギュッと抱えて小さくなって項垂れる康介に、僕はそっと寄り添った。 「康介……小峰君に何かされた? ……その、体の方は大丈夫?」 僕の顔をバッと見た康介は「体は大丈夫!何もされてない」と答えてくれたから少し安心した。 康介がおかしいのは修斗さんに嫌われるんじゃないかって、それでこんなに怯えてるんだ。 馬鹿だな康介は。 知らなかったんだからしょうがないじゃないか。そんなの修斗さんだってわかってくれる。 なんと言って慰めてあげようかと声をかけるのを戸惑っていると、突然勢いよく部屋のドアが開き、周さんが入ってきた。 「康介! 大丈夫か? お前何やってんだよ!」 驚いた…… さっきメールを入れておいたんだけど、周さんバイト終わってすぐに来てくれたんだ。 でも、泣いている康介にそんなキツい言い方しなくたっていいのに。僕は周さんを止めようとしたけど手遅れだった。 泣いている康介を見て周さんは更に激怒する。 「お前! 小峰に何された? 」 「………… 」 周さんの剣幕に驚いてしまっている康介に変わって、僕が康介から今しがた聞いたことを説明した。 「康介は何もされてないです。大丈夫! 小峰君が修斗さん襲った犯人じゃないんだって騙されて、一緒に一日過ごしてたみたい……」 僕の言葉に「お前バカだなぁ!」と言って康介の頭をガシガシと撫で回した。撫で回しながら何度も「バカ」だの「アホ」だの言っている。 ……周さん、ほんとデリカシーがなさ過ぎる。

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