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発見
康介がいるというその店に向かって僕らは急いだ。仕事帰りの人で溢れかえるこの界隈で、不安で押しつぶされそうになりながら康介を探して歩いた。
「あ!」
突然修斗さんがひと言吐き出し、全速力で走り出す。修斗さんの向かったその先に見えたのは、間違いなく康介の後ろ姿だった。
僕も修斗さんを追いかけ夢中で走った。修斗さんの足が早すぎて全く追いつけないけど、僕は康介から目を離さないように頑張って走る。そのうち修斗さんが康介に追いつき、突き飛ばす勢いで後ろから康介に抱きついているのが見えた。
よかった……本当に良かった。
でも……
康介は必死の形相で修斗さんを引き離し、ふらふらと逃げるようにその場から離れた。
え……?
どうしたの?
僕も修斗さんと康介に追いつき、康介に話しかける。
「……康介! 大丈夫? 探したんだよ!」
康介を見ると、何か怯えたような顔をして、しきりに「なんでもない、大丈夫」と繰り返している。全然大丈夫なように見えないその姿に不安が増した。修斗さんもそんな康介を見て呆然としている。近寄るなと言わんばかりに康介はどんどん後ろに下がっていくから、なんて声をかけていいのかわからなくなってしまった。
大丈夫と言いながら震えている康介。
志音も高坂先生も追いついたけど、康介の様子がおかしいのは変わらなかった。
震えてるし泣いている……
高坂先生が康介に近付いて何か話しかけている。先生は康介に頷くと「とりあえずもう帰ろう」と提案した。
修斗さんは力が抜けてしまったのか、その場でしゃがみこんでいる。志音が肩を貸して立たせると、そのまま高坂先生も一緒に修斗さんを連れて帰っていった。
僕と康介はその場で立ち尽くす。
康介の目からは相変わらず涙がポロポロ落ちていた。
「……康介? 僕らも帰ろう……帰って話、聞くから。ね? 大丈夫? 歩ける?」
できるだけ優しく、僕は康介に話しかけた。康介は黙って頷くとトボトボと歩きだした。
無表情で歩く康介を僕は見る。服も乱れてないし、見えるところには傷や痣も無さそう。歩き方もちゃんとしているから、きっと大丈夫なんだよね?
康介は幼稚園の頃から色々と僕のことを気にかけてくれていた。沢山僕の事を心配してくれて、助けてくれた。
いつも元気で前向きで……
そんな頼れるお兄ちゃんみたいな康介が、こんなになっている……こんな辛そうな康介は見たくない。あんなに大好きな修斗さんにだってあんな態度で絶対におかしいんだ。
とにかく帰って康介の話をちゃんと聞かなきゃ。
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