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真実と絶望
「僕……あのまま諦めようと思ってたんだ。でもあんなに楽しそうに、嬉しそうに谷中先輩と一緒にいる康介君見てたらさ、僕にもそういう顔見せてほしいって思っちゃって……」
俺を見つめて溜息を吐く小峰。いつもの表情が強張っていくのがわかる。
「僕だって康介君とデートしたかった……なんで谷中先輩なんだよ! 誰とでも寝るような汚い人……綺麗な康介君に相応しくないんだ! 思い知らせてやったのに……あの時は邪魔が入ったけど… 」
え? ちょっと待て……
「お前!……まさか、やっぱり!」
全身が凍りつくようなゾッとする感覚。小峰は俺をキッと睨んだ。
「そうだよ! 谷中先輩襲ったのは僕だよ! だって許せないだろ? 谷中先輩、汚いくせに康介君に近付いて……」
さっきから汚い汚いって、何なんだ? 修斗さんが汚いって言ってんのか? 意味がわからない上にめちゃクソ不愉快だ。
「ふざけんなよ! 修斗さんが汚いわけねーだろ!……あの人は、色んな人とデートするけど付き合ってない人には手も握らせないって…… お前何を見て修斗さんをそんな風に言うんだよ!」
俺は手錠で繋がれた手で小峰を突き飛ばした。もう全身が怒りで爆発しそうだ。
「お前! 引っ越すとかなんとかも嘘なのか? ……それに、それに……お前、俺に何した? 」
怒りの感情が占める中、恐怖と不安も加わり手が震える。
「転校するのは嘘じゃない……ごめんなさい。康介君には何もしてない! ちょっと眠くなるクスリ飲ませただけ……信じて! 制服は皺になるから、だから脱がせたんだ……でも、でも僕、康介君の肌に触れてみたくて、勝手に抱きしめてもらっただけ……気持ち悪いよね……ゴメンね」
俺に突き飛ばされ床にへたり込んだ小峰が涙目で俺を見つめ謝ってる。この現状に頭が追いつかない……でも俺が物凄く馬鹿野郎なのははっきりしている。小峰の本性に気付けずにこんなことになってしまった。小峰に向いた怒りの感情は勿論だけど、それは自分自身にも向いていた。
「……僕、康介君を穢したくないから……抱きしめてもらうだけでもう十分だから……」
はぁ? 何言ってんだ? 穢したくないって何なんだよ!
「うるせえ! 黙れ!!」
段々と込み上げてくる怒りに吐き気すら覚える。どうしようもない感情にどうしたらいいのかわからない。
俺は修斗さんをあんな目に合わせた張本人と楽しくデートをしてたのか? 裸で抱き合って一晩を一緒に過ごしたのか?
「ふざけんな!!」
馬鹿な自分が許せなかった。このままもう消えてしまいたい……
何より、修斗さんに合わせる顔がない──
「もう、いい……」
小峰が俺の顔色を伺っている。
「康介君? ごめん…… 」
「もういいって言ってんだろ! 俺の前から失せろ!!」
悔しくて情けなくて、涙が出てくる……
小峰は慌てて俺の手錠を外し、自分の制服を抱えて出て行った。
俺……何やってんだ、ほんと。馬鹿みたいだ。
周りを見てみるとハンガーに俺の制服が掛かっている。のろのろと起き上がり、俺は制服に着替えた。
そうだ。今は何時だ? 昨晩から俺は何時間寝ていたんだろう……
時計を探そうと首を回したら目眩がして、思わずベッドにドスンと座り込んでしまった。
……本当俺、何やってんだ。
涙が溢れて止まらない。体が震えて止まらない……
修斗さんとどんな顔して会えばいいんだよ。こんな俺、幻滅される。
嫌われる……
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