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別れ

春は別れと出会いの季節なんだって── 今まで気にしたことがなかったけど……そうだね。 春、僕には沢山の素敵な出会いがあった。 沢山の出来事があって、僕は凄く成長したと思う。 この一年間で僕に関わってくれた全ての大切な人たちのおかげだ…… 僕にも康介以外の友達が出来た。年齢関係なく、仲良くしてもらった。 優しくしてもらった。 大切な人達。 でも、今の僕はその大切な人との別れに直面している。 こんなに寂しくて悲しい思いは初めてだった。 もう泣かない、涙は見せない…… そう決めたけど、やっぱり寂しさが溢れてきてどうにもならない。 圭さん、早く戻って来てね。 口に出してそう言いたいけど、きっと多分それを一番思っているのは圭さんなんだ。 陽介さんと別れる。そう決意した圭さん。陽介さんと二人で話し合って納得して決めたんだよね? だから僕がその事をとやかく言ってはいけないんだ。 わかってるけど…… わかってるけど、伝えたい事は沢山あった。 圭さんは辛くなるから見送りはいらないと言っていた。 でも僕らはみんなで圭さんのマンションまで見送りに来た。本当は空港まで行くつもりだったけど、圭さんにお願いだからやめてくれって言われて、今マンションのエントランスでお別れをしている。 圭さんが一人一人にハグをしてくれる。 志音にハグをしながら「周や志音君はデカいからやだな、俺チビみたいじゃん……」と言って笑った。 みんながしんみりしてる中、圭さんだけは明るくいつも通りの圭さんだった。 笑顔の圭さんに僕は手紙を渡した。 昨日の夜書いたんだ…… 色んな気持ちが渦巻いてどうしようもなくて、迷惑かもって思いながらもどうしても伝えたくて…… 僕はその思いを手紙にしてしまった。 驚いた顔をして圭さんは僕の手紙を受け取ってくれた。 「男から手紙なんて初めてもらったよ。竜太君ありがとな。後でゆっくり読ませてもらうね」 優しく微笑んで、手紙を大事そうに鞄にしまう。 「……そろそろ行くわ。わざわざ来てくれてありがとう」 そう言って手を振り、圭さんは迎えに来たタクシーに乗り込んで行ってしまった。 「ねぇ……周さん? 陽介さん来ませんでしたね……」 「……そうだな」 僕は周さんの胸を借りて、少しの間だけ泣いた。 初めて感じた……別れの寂しさ。 でもまたきっと会えるよね。 いってらっしゃい圭さん。

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