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第60話
野宮
僕のモノとか、そんなワガママ言って俺はモノじゃないぞ!
そう思いつつも気持ちが緩んでしまう自分がいた。
モノって……
そんなに俺が欲しいのか……
君の大好きな愛しい彼はいいのか?彼が応援してくれるという表現は不思議だった。
それは恋人ではなく家族に近い存在ということなのだろうか?しかしそれ以上にも聞こえてしまう特別感があった。
おかしな子だな。
この子の素直過ぎる発言は危険だと苦笑しながらも愛おしく思ってしまう。
結局俺は宮ノ内のことが可愛くて可愛くて仕方がないのだ。
だから許してしまう。
やれやれ、自分の気持ちに正直になるっていうのは、なかなか勇気のいることだと痛感した。
たまにはおじさんも素直になるか……
俺だってお前が欲しい……そう思いながら誘われるまま唇を重ねた。
濡れた唇はあたたかく柔らかい。
車の座席で抱き合いながらキスをした。
素足は砂で汚れているし、パンツの裾も濡れているけどそんなことを気にしている場合ではない。
全力で俺と向かい合っている宮ノ内が愛しくてたまらない。
可愛くて可愛くてついキスが深くなってしまう。
いままで恋人がいたことはあったが、こんな甘いと感じたキスをしたのは初めてだ。
零れる吐息が溢れる唾液がまるで媚薬のように俺を誘ってくる。
白い肌にほんのり赤い頬や濡れたような長い睫毛……
「は……ぁん……はぁ……」
……くちゅ……くちゅ……
舌が絡むたびに艶のある水音が車内に響き、否が応でも欲情してきてしまう。
……
情けない……
この年で欲望を抑えることができないなんて情けない。しかしそれだけ宮ノ内が魅力的なのだ。
「……あ……あ……野宮……さん……」
「……」
長いキスをした後の宮ノ内は口が半開きで唾液で濡れて妖しく光り、肩で息をしている状態でそれら全てがエロい。
……こんな姿……
……そんな色っぽい宮ノ内の表情を今まで何人の奴が見たのか……
一瞬よぎったおかしな妄想にイライラしてしてしまうのは、やはりこの少年に惚れているからだろう……
腕の中にいるこの少年を離したくない……そう思った。
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