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愛おしい時間

シンと一夜を共にした後、シンにフラットまで送ってもらった。 ちょうど劉さんと町田がいて、いきなりの教授の登場に驚いていた。 『ギルバード教授!?何で俺らの家に?』 町田は素っ頓狂な声をあげて、驚いていたが、劉さんは納得したらしく、『真尋、良かったね』と笑った。 『マヒロ。私はそのまま大学に行く。用意を整えたら、大学に来るといい』 『うん。分かった。……またね』 『あぁ』 くしゃりと頭を撫でられ、教授は大学へ向かっていった。 その後ろ姿さえもかっこよくて、でも離れがたくて……「行かないで」って言いそうになったけど、ぐっと堪えた。 その様子を見た町田が、やっと『もしかして、上手くいったの!?』と気がついた。 『洋平、気づくの遅いよ。真尋、ご飯食べた?それか何か飲む?』 劉さんは笑いながら、俺を部屋の中に入れてくれた。 少し、お茶をして準備を整え、三人で大学に向かった。 襲われたことは心配されるかもだから、そこは抜いて、大雑把だけど、シンとのことを説明をした。 道中、静かに聞いていた劉さんは、『遠距離って辛いことの方が多いけど、会えた時はすごく嬉しいよ。真尋、頑張ってね』と応援してくれた。 劉さんも早く天華(ティエンファ)さんに会いたいんだろうな。 町田も、『外国人と付き合うとか、真尋すげー!』と驚いていたが、応援してくれた。 大学に着き、町田と講義を受けた。 今日の講義は、シンの講義がお昼から二本続けてあって、その後別の教授の講義があって終わりだ。 この間休んだ分の課題は明日までにしなきゃいけないから、今夜は徹夜かなぁ。 シンが教室に入ってきた。 さっきまでとは別人のように、笑顔もなくクールなギルバード教授になっていた。 『それでは、講義を始める。教科書130ページを開いて』 昨日は本当にシンは優しくて素敵だった。 Hも、すごく気持ちよくて……あんなに気持ちいいものなんだって初めて思えた。 百戦錬磨の男ってバーで呼ばれてたのは、嘘じゃなかったんだ。 そんなことをぼんやり考えていると、シンと目が合った。 教科書を読みながら、彼はふっと薄く笑った。 ……もしかしたら、何を考えていたのかバレたのかもしれない。 そう思うと恥ずかしくて、シンの顔が見れなくなってしまった。 今日の講義が全て終わり、俺は半分だけでも課題を終わらそうと図書館に籠ることにした。 書庫の近くにある席が一番静かで、資料も探しやすいから、そこをウロウロしていると、急に腕を引っ張られ、書庫に引きずり込まれた。 誰だろうの見上げると、シンが俺を抱きしめていた。 「シン!?」 「やぁ、マヒロ。さっきぶりだね」 柔らかく笑うシンは、さっきの講義とのギャップもあって、すごくドキドキした。 それに図書館でこんなこと……誰かに見られたらと思うとハラハラしてしまう。 「あの、ここ図書館だし、誰かに見られたら……」 「大丈夫。ここは監視カメラからも死角で見えないし、めったに学生も来ない。いわゆる、穴場ってやつだ」 「お、俺……課題しなきゃいけないし……へ、変なことしちゃダメ……」 シンは静かに笑いながら、俺の顔を両手で包む。 「マヒロが私の講義中、私を求めるような目線を送るからだ」 「え!?送ってないよ!」 思わず大きな声で否定したため、シンに自らの唇で俺の口を塞いだ。 ぬるりと舌も入れられ、絡める。 口の中でHしてるみたいで、昨日のことを思い出してしまった。 「マヒロはすぐそうやって、俺を誘う」 「誘ってないよ……。俺、課題しなきゃいけないから」 そうやって逃げようとすると、シンはあっさり俺を離してくれた。 「そうか……休んでいた分の課題だな。頑張って」 そう言って離れようとしたのを、思わず裾を掴んで止めてしまう。 「あの、やっぱり……もう一回キスして……?」 「マヒロ……そんなに可愛い顔、他の奴らの前でするなよ?」 シンは俺を抱きしめながら、キスしてくれた。 もうすぐ、シンと離なければいけない。 そう思うと、やっぱりこういうちょっとした時間も愛おしいんだ。

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