61 / 80

第61話

誰にもゆきを盗られたくない。その一心で精一杯優しくしたしゆきを変な目で見るやつは先制した これまでのことが嘘みたいにゆきは俺しか見えなくなって俺と中意外には氷のような視線を向けるようになった 嬉しくもあり複雑でもあったが大切に大切にしてきた。 ある日ゆきが街中でナンパされた。俺が少し離れた一瞬の出来事で小さな体を引っ張っていく後ろ姿を見て肝が冷えた 急いで追いゆきを連れ戻した。ゆきはボロボロ泣きながら震えていた 「あーちゃん…怖かったよぉ」 「ごめんね…俺がついていながら…」 どうしても涙が止まらないみたいで俺の家に連れてきた。 今日は誰も帰らない日 暖かい飲み物を準備して部屋で待つゆきの元へ急いだ 部屋に入るとゆきが俺のベッドで俺の枕を抱き締めて眠ってた 「ゆき…大丈夫?」 寝顔が可愛くて何時間だって見ていられそうだった。 触りたいな…もっと… 付き合いだしてまだ手しか繋いでない… さらさらの髪を撫でながら欲は増していく…抱き締めたい…キスしたい…もっと先のことも… 衝動が押さえられなくてそっと額に口付けた 「ん…あーちゃ…」 「ごめん。起こしちゃった」 「ん?…あ!ごめん!寝ちゃってた…だってここはあーちゃんの匂いで一杯で…安心しちゃって…」 「いいんだよ。大丈夫。明日休みだし泊まってく?」 精一杯勇気を出して誘った。 「いいの?」 「うん。大丈夫。今日から家族は旅行でいないんだ」 「旅行?あーちゃんはいかなかったの?」 「俺はゆきと遊びたかったから…」 「そっか。じゃあ…お言葉に甘えちゃおうかな」 「うん」 「家に連絡するね。」 枕元に置いてあった携帯でいそいそとかけるゆき。 『もしもし。お母さん。あのね。今日彼氏んちに泊まってくるからね。うん。じゃあね』 電話をするゆきをあんぐりと口を開けて見詰めてた 「あーちゃん?どしたの?」 「彼氏って…彼氏って言ってくれた…」 「えへっ…だめだった?」 「嬉しい!抱き締めてもいい?」 「うん!」 小さな体をキュッっと抱き締めた。初めてのことでとてもドキドキした 「ご家族は男同士に偏見はないの?」 「うん。僕が選ぶのなら否定はしないって言ってくれたよ。あーちゃんの写真見せたらカッコいいねってみんな言ってた」 「そう…そっか…」 「あ。でもね。あーちゃんは無理しなくていいからね?やっぱりこういうの見る人が見たら…ね?」 「大丈夫だよ。うちもそういうの寛容なの。だからもう伝えてある。それに…俺の母親はもう既にいなくてそもそも今の母親代わりは俺の父親の彼氏だし」 そう。母がなくなって数年。父が連れてきたのは同性のパートナーだった。始めは驚いたけど俺自身もゆきが好きだから割りとすんなり受け入れられた。 父とパートナーで今日は旅行だから邪魔したくないのもあって俺はついていかなかった。 行かないといったらパートナーは泣きそうになりながら寂しがってくれた。とてもいい人だ。 本当の息子のように接してくれて愛してくれてる。おそらく父よりも。 「逆にゆきはそういうの親に持つことに偏見はない?」 「あるわけないでしょ。だって僕自信がそうなんだし。っていっても僕はあーちゃんだから好きなんだけどね。他の男なんて気持ち悪いよ」 「…中は?」 気になってたこと。それが中の存在。 「中?中はもう兄弟みたいな感じ。中とそれ以上の何かあるとか…想像しただけで…気持ち悪い…」 「よかった…」 「何?中とのこと疑ってたの?酷いなぁ」 「中いい奴だしイケメンだし…心配だっただけ…」 「やきもち?」 「…ん…」 肯定するとニコッと花のような笑顔を見せてくれた 「嬉しい…あーちゃんとっても人気者だからやきもちやいてくれるなんて思わなかった…大好き…あーちゃん」 自然と唇を重ねてた 「ふふっ…ちゅーしちゃったね…うれし…」

ともだちにシェアしよう!