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第141話
僕がそう聞けば、彼は顔を赤くしたり青くしたりした。
彼の中で、何かと葛藤しているんだろうな……
そんな彼を見ながら、僕は小さく溜め息をついた。
あー、昔の悪い癖が出た。……性悪だな、僕も。
「いいよ、助けてくれなくて。
……それより、ここって、何?
さっきの部屋にいた人達は……?」
僕の質問に彼がハッとする。
まだ瞳が揺れているが、思考の迷路からは戻ってきたようだ。
「……え……?」
躊躇いがちに視線を彷徨わせながら、口籠もる。
「金持ちの年寄りから、お金を……その……」
「……」
「……つまり、オレオレ詐欺……だよ」
最初こそもごもごとしていたが、観念したのか、オブラートに包む事無くハッキリと答えた。
「さっきいたのは『掛け子』って言って。裏で買った名簿を使って、片っ端から電話しまくってる人達」
「……ふぅん」
まともな所じゃないとは思ったけど……
……そういえば、ハイジは薬をさばきながら、詐欺の受け子をしたって言ってた……
『菊地』
そうだ。
半グレ集団の……龍成がお世話になったという、菊地。
「マニュアルを駆使して言葉巧みに上手く騙して、『受け子』が金を回収しに行く。……それらを指示する人が、箱長である『菊地』さん、だよ」
「……」
……どんな感じの人だろう。
吉岡は、モンスターって言ってた。
その人に抱かれた後、僕はちゃんと解放して貰えるのだろうか。
ハイジの事をお願いして、殺されたりしないだろうか……
「特殊詐欺なんて、悪い事だっていうのは解ってる。……けど、殆どの人が、洗脳されてたり今の現状から抜け出せなかったり。
………セミナーとか集会とかあって、『これは、世の中の金回りを良くする事だ』とか、『学校では教えてくれない、人生を豊かにする大切な経験ができる』とか……」
「……」
「最初のうちは、そんな気になったりもしたけど……どっかで気付いて抜け出そうとする人もいて。
……でも、捕まって酷い目に遭ってるのを目の当たりにしてしまうと……怖くて。抜けたくても抜けられない。
……もう、どうしていいか……解らない……」
眉間に皺を寄せ、自分の置かれた心情を吐露し始める。
本人には、その自覚がないようだけど。
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