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第421話

ニタついた男の顔──それが、後方へと退かれていく。 「おい、テメェ──!」 ──ブチブチブチッ 鷲掴まれた髪が、男の形相を変える程強く引っ張り上げられる。そのせいか、毛の抜け切れる音まで聞こえたような気がした。 驚きと恐怖に戦いた男の顔。それが、乱雑に天井へと向けられれば……鷲掴んだ手の主である男の顔が寄せられ、威嚇するように睨み付けられる。 「お前はいつから、俺より偉くなったんだ……?」 「……」 「なァ!!」 「………す、すぃません……」 それまでの威勢の良さはすっかりと消え、ぶるぶると震えながら消え入りそうな声を上げる。 その一連に恐れを成したのか。僕を取り押さえ、剥かれた裸体を好き放題に弄んでいた周りの男達が、スッと退いていく。 ──誰……? 僕を、助けてくれた……のは……… 「……」 まだぼんやりとする脳内。 ぼやけた視界。 くぐもって聞こえる音。 だらんと弛緩する、色白の細い裸体。 無理矢理引き出された快感のせいで、失ってしまった男の楔が恋しいと、濡れたアソコがヒクつく。 「この一年の間に、随分と色っぽくなったなァ……お姫サマ」 もう用済みだと言わんばかりに、掴んでいた男の頭を投げ棄てると、此方に向けられる顔。ゆらりと揺れながら近付き、僕の上に跨いで立つ。 「──いや。VIPで会った時から、か?」 僕を見下げる鋭い眼。 無機質なそれに、優しさなんて微塵も感じられない。 あるのはただ── 「堪らなくそそられるぜ」 「……」 「一体どう調教されたら、ここまでエロくなれんだよ……」 徐にしゃがみ込み、僕の顔を覗きながらクイと顎を持ち上げる。 「………惜しいな。 やっぱあん時、ヤり捨てなきゃ良かったぜ」 「……」 「でも、まァ……そうしなきゃあ、今のお前は無かったかもしれねぇんだよな……」 独り言のように呟いた後、口元を歪め、少しだけ緩んだ瞳が近付き……簡単に僕の唇を塞ぐ。

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