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第554話
……はぁ、……はぁ、……はぁ、
『素直に「うん」って言やぁいいんだよ』──いつもだったら、何の説明もなくそう言って、強引に押し切ってしまう癖に。
あの竜一が……順を追ってちゃんと話してくれてる。僕の為に。
「………ん、」
胸の奥が、温かい。
まだ、少し痺れてるけど……感覚の戻ってきた手を伸ばし、竜一の脇腹辺りに触れる。
「わかった……」
苦しさから徐々に解放され、次第に呼吸が落ち着いてくる。
「……待ってる。その日が来るまで……ちゃんと、待ってるね」
だけど、不安が拭えた訳じゃない。
その日がいつ来るかなんて、誰にも解らないから。
──それでも
信じて待ってみようと思う。
だって……
もう二度と会えない訳じゃないし。監禁されてた時とは違う。
ただ少し……辛抱するだけ。
確認するように、ピアスの箱を握り締める。と、背中を撫でていた優しい手が、僕の横髪を梳きながら愛おしそうに撫でてくれる。
温かくて……気持ちいい。
「……」
心地良さも手伝い、何だか酷く疲れてしまって。
ゆっくりと、瞼を閉じる。
触れていた服の布地をキュッと掴めば、その手の甲にそっと、竜一の手の温もりが重なった。
「………愛してる、さくら」
幻聴、……だったんだろうか。
今までそんな台詞を吐いた事のない竜一の声が、微睡みの向こうから聞こえたような気がした。
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