17 / 19

落着 3

 リビングのテーブルの上に置きっぱなしのチョコレートの箱がある。 「これ、Le・シュクルの、ですよね。加藤さんに貰ったんですか?」  あからさまに不機嫌になる石井を鼻で笑う。ヤキモチを焼かれて嬉しいと思う。 「何笑ってっ」  詰め寄る石井の、その唇に軽く口づける。 「やー、可愛いなって」 「なっ」  慌てる姿も愛おしい。  口角をあげ、彼から離れると武将の元へと向かう。  尻尾をはちきれんばかりに振るい喜んでいて、その身を抱き上げて頭を撫でる。 「大浜さん」  武将を抱いたまま、石井の元へと戻り額を肩に当てる。 「お前も、武将も、可愛いよな。俺が近寄っただけで喜んでくれて」   目尻がひくっと動き、そして腕がそっと腰へと回る。 「貴方だって、可愛い、ですよ?」 「あぁ? 違うだろ。俺はカッコイイの!」  そこは譲れないと人差し指を石井の顔の前にたてる。 「そうですね。かっこいいです」  石井がくすりと笑う。良い傾向だなと嬉しくなって大浜も笑う。 「よろしい」  と再び口づける。深く、欲を感じるものだった。 「なぁ、たってるぞ」  下半身の膨らみを指させば、石井が貴方もですと返してくる。 「触るか?」 「ですが、無理って」 「あの時は覚悟が足りなかった。でも今はお前に触れて欲しい」  石井の手を掴んで自分の胸へと押し当てる。 「まだ本番は無理だけど」  それでもいいかと顔を近づける。 「はい、それでもいい、貴方が俺に触らせてくれるというならば」 「よし。武将、玄関で大人しくしてるんだぞ」 「わん」  段ボールの中にクッションを詰めてそこに武将を入れる。  大浜の匂いがついているせいか、大人しくそこで丸くなった。 「うん、いい子だな武将は」  後ろから抱きついている石井に向けて言う。 「俺の子ですから」 「下心で武将を利用していた癖に」 「武将はキューピットです」 「はは、調子いい奴」  と軽く拳で肩のあたりをたたき、 「その前に、シャワー浴びてくる」  走ってきて汗をかいているからと、離れるようにいう。 「別に、臭くないですよ」  すんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ石井に、顔を向けて離れろともう一度言う。 「よいから待っときなさい」  ベッドを指さすと、今度は素直に身を離した。

ともだちにシェアしよう!