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Ⅰ こんな出逢いはアリですか?③

水も滴るいい男の名前は、天本(あまもと) 珠樹(たまき) 名前は聞いたばかり 歳は大学生くらい。 一週間前に引っ越してきたお隣さん うっそうと生い茂る草の庵だった庭に、黄色や赤、夏色の花が所狭しと咲いて鮮やかな色彩に色づいたのが、ちょうど一週間前だ。 お隣さんは庭の水やりをしていた。 そこへ通りがかった俺に気づかず、ホースの水をかけてしまって…… お詫びがしたいらしく、俺は只々だだっ広い応接間のフカフカソファで身をもて余している。 有名ホテルか老舗?皇室御用達? 紅茶と一緒に出されたクッキーが、とにかく美味しくて!……一気に全部、食べてしまった。 おかわりは図々しいよな~ 紅茶も飲んでしまったから、ほんとに手持ち無沙汰だ。 「涼君」 「……ん~」 「起きてください、涼君」 「んん~」 「お風呂、沸きましたよ」 「お風呂~」 「一緒に入りましょう♪」 「……ギャァァー♠」 なにウトウトしてんだ、俺ー! 男同士♨♂×♂ 洗いっこに誘われてるんだったー!! つか、その前にっ 「なんで俺の名前知ってんだよっ」 「知ってますよ。中川(なかがわ) (りょう)君でしょ」 こいつ! 「ストーカーだ!」 ヤバイっ、思いっきり口に出してしまった。 ストーカーは逆上させてはいけないんだ。どんな凶行に及ぶか分からない。 ……あれ? ストーカーお兄さん、にこにこしてる。 自分の存在を認知されると、ストーカーは嬉しいものなのかな? 「名字は表札を見ました。 名前は一週間前、お母君に叱られている声が聞こえてきたので♪」 「う~」 聞かなきゃ良かった。恥ずかしい~ ごめん。 「ストーカーだなんて疑って」 「いえ。疑わせてしまうような発言をした私にも、非があります」 案外いい人だ。 美味しい紅茶とクッキーも出してくれたし♪うんうん。 「疑いも晴れたので行きましょうか?」 「どこに?」 「お風呂です」 ウギャーッ、前言撤回! いい人は、お風呂で洗いっこしない! 「脱ぐなー!」 ここ、応接間。 脱衣所じゃない! 脱ぐの早すぎだろっ ……腹筋割れて、いい体だ。 筋トレしてるんだろうか。 「触りますか?」 にこ♪ 「ギャー!」 迫らないでっ。 わっ、手を掴むな。 引っ張るなーっ! ふにゅぅ~…… 俺の口、への字 抵抗したのに、いい体の強靭な腕力には抗えなかった。 ……男として、ちょっと凹む。 う~………でも。 俺の掌が、お兄さんのお腹を、さすさす そのまま上がって、胸板、すりすり 経緯はどうあれ、筋肉を触れるのは、ちょっといいかも♪ 固い。 しっかり程よく筋肉がついてる。 胸板も厚いな。 「涼君」 「ん?」 「お風呂でも泡つけて洗ってくださいね♪」 「ナァァァーッ!!」

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