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Ⅱ バスルーム・デート②
「絶対入っちゃダメだからね!」
「背中、流しますよ」
「一人で洗えるから!」
「髪の毛、洗いましょうか」
「一人で洗える!」
「アソコの毛も洗」
この襲い魔めっ
「一人で洗う!」
「肩まで浸かって、100数えてから出るんですよ。一緒に100数えましょう」
「一人で数えられる。俺は半身浴派!」
バサンッ
名残惜しそうな顔が見えたが、容赦しない。心を鬼にしなければ!
脱衣所のドアを閉める。
洗いっこする気満々。上半身裸で下半身も脱ごうとしている天本さんを追い出して、やっと一人になれたよ~
「涼君、バスタオルは」
「後で置いといて!」
たく、もう~
俺は子供かっ
こうなったら10秒
否
「5秒だ」
5秒でお風呂、出てやるんだ。
そんでもって家に帰る。
郵便局は、また明日。
もちろん天本さんは誘わない。
お泊まりもしない。
お風呂から出て、俺は自由を取り戻すんだ!
だが。
ガラス戸を開けた瞬間、決意は3秒で挫かれた。
「……いい匂い」
薔薇かな?
ふわりと鼻孔をくすぐった。
柔らかくて豊潤な花の香り……
最初は薔薇かと思ったけれど、南国のエキゾチックな花の香りのようでもある。
湯船に浮かんでいる。
色彩鮮やかな花びら達
「……ちょっとくらいなら長湯もいいかな」
……油断したのがいけなかった。
シャワーを肌に当てて、もうっと真っ白な湯気がバスルームに立ち込めた時……
ガランッ
「すみません。シャンプーを切らしていたのを思い出しました」
「天…本、さん……」
開いたガラス戸
どうして入ってきたんだ?
俺は、天本さんに見られてしまった。
俺の裸を……
どどど、どうしようー!!
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