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Ⅱ バスルーム・デート①
洗いっこ反対!
お風呂回避!
彼の魔の手から逃れて、この家から出なければっ
そうだ★
「郵便局、行かないと」
手を払ったタイミングで、身を翻した。
不在票がポストに投函されてたんだ。
こないだ応募した懸賞が当たったんだよ!凄いでしょ♪
「旅行券!夏休みの思い出作るんだから」
郵便局に取りに行かないと。
「そういう事でしたか」
そういう事!
郵便局に行こうと家を出たら、お隣から庭の水撒きの洗礼を受けたんだ。
「申し訳ない事をしました」
「いいよ、わざとじゃないんだから」
「涼君は強運なんですね」
「そうだね。懸賞、結構当ててるよ」
先月も当てた。
松阪牛に神戸牛、但馬牛、飛騨牛、近江牛、仙台の牛タン♪
……牛ばっかだな。
俺、肉食系だし~♪
さぁ、ようやく本来の目的地 郵便局に向かえるぞ。
その前に挨拶くらいはしなくちゃな。
美味しい紅茶とクッキー、およばれしたし。
「天本さん、ありがとうございました」
「こちらこそ、また明日」
「はい。また明日」
……また明日?
「郵便局の営業時間、終わってますから。明日、一緒に行きましょう。今夜はお泊まりですね」
「えーっ」
もしかしてっ
「はい」
にっこり♪
「余りに気持ち良さそうに眠っていたので」
外、真っ暗だ~
「おはようございます、涼君」
「……おはようございます~」
「それでは……」
ふわり
体から重力が逃げていく。
心地良い浮遊感が、俺を包む。
「行きましょうか」
郵便局、閉まってるよ。
……顔近い。
キスできる超至近距離だ!
……って、キスしないからなっ。
天本さんとは身長差がかなりあるのに、顔が近いのはなぜだろう?
………俺の足、床についてない。
「アーッ!」
俺ェェーッ、お姫様抱っこされてるー!!
「案内しますよ」
案内って、案内って。
逃げ場のない案内に、嫌な予感しかしないっ
「バスルーム、こっちです」
やっぱり~♠
降りなきゃ!
途中停車駅なし。
お風呂直行特急列車から、今すぐ!
「お風呂に入れようとすると、暴れて……立場、逆転しましたね」
立場?
俺と天本さんの?
トクンっ
ぎゅっと抱きしめられて、心音と心音が重なった。
「涼君、大好きです」
天本さんと俺………初対面だよね?
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