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Ⅴ 言葉のない空の霹靂
手を振り払って、バスルームから飛び出して、ビショビショのまま洗濯機から引っ張り出したビショビショの服を着て……
それから、どうしたのか覚えていない。
天本さんの声が聞こえたけれど……
振り返らなかった。
家に帰りたくなくて。
ジィージィー
熱帯夜に鳴く蝉の声を追いかけながら、歩いていた。
あてもなく……
ジィージィージィー
鼓膜に絡む蝉の声
ジィィィー
黒い絵の具を黒い筆でかき混ぜた空から、
ガラガラガラッガッシャーン!!
真っ二つに割れる嘶きが轟いた。
雷鳴
………じゃなかった。
真っ暗な空から、鉄骨が降ってくる。
俺は建築現場の真下にいて、真っ黒な空を割った建築資材が轟音を上げて、頭上から降ってきた。
そっか
俺……
天本さんの事、大嫌いって言ったから。
天本さんの加護がなくなっちゃったんだ。
強運から、一気に不運に転落したんだ……
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