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Ⅳ うそ③
「私の生殖器を君に差し込めば、君の股から男性器が生えてきます」
君の中に、挿れますよ
「ギャァァーっ!!」
なんで突然、そんな話になるんだーッ
無理無理!
絶対、無理っ!
「俺は男でッ」
ソレを挿れる穴はない。
「雄穴に挿れるから、大丈夫ですよ」
「おすあな?」
「お尻の穴です」
にこり♪
「ウギャァァー♠」
俺のお尻に……アレを、だなんて。
「痛い思いはさせたくないので、まず指で慣らしますね。穴をクニクニ指でこねます。お尻の穴から力、抜いてください」
リアルだッ
リアル過ぎるッ
「やめっ!……アっ」
くぐもった悲鳴を漏らしてしまった。
俺の意思を聞いてくれない指が、割れ目に添って、つぅ……と這う。
屈強な体に押さえつけられて、身動きできない。
上半身だけひねって後ろを見た視界に飛び込んできたのは……
真っ白い湯煙に天を仰いでそびえている、彼の股間の……アっ、アっ……
アレだ!!
ドクンドクン脈打って、ビュクンビュクン膨らんでいる。
やらしくぬめっているのは、湯煙の湿気のせいじゃない。
彼が少し動く度、ブルンと揺れて主張する。
くっきり筋が走っていて、カリもデカい。皮の剥けた先端と竿の段差がはっきり見てとれる凶悪な形をした剛直は、太くて、まさに雄の象徴そのものだ。
怒張の裏側で大きな玉袋が、たぷんたぷん揺れている。
……あんなグロテスクなものが、俺のお尻に入る……
怖い……
卑猥な異物だ。
勇ましく猛々しい怒張は、雄のやらしい性欲そのものだ。
「お尻、痛くないようにしますね」
挿れるんだ……
アレをお尻にムギュウ~っと。
どんな感じなんだろう。
「たぶん、気持ちよくなると思いますよ」
「ダメーっ!」
アレで気持ちよくなったら、男としてかなり凹む。
お尻はそんな事に使っちゃいけないんだ!
「いらないーっ」
「でも、おちんちん欲しいでしょ」
「うっ」
いらない……事はないけれど。
天本さんを受け入れたら、俺にもナニが生える……
アレだぞ。
アレ……
目の前でいきり立つアレと同じのが、俺の股にも生える……
ブルンブルン!
天を突き刺してドクドク脈打つ、ヌメヌメの股間の異物が俺にも……
………グロい。
「やっぱり、いらない!」
なくたって困らない。
「好きになると、心も体も欲しくなる」
大きな掌が、やんわりと……
異物のない陰毛を撫でた。
「君は、心だけで満足できますか」
ドクドク、鼓動が打ちつける。
闇の奥
ひとひらの彼岸花の咲いた瞳が、俺を見つめている。
俺を閉じ込めている。
「君を愛したい」
ドクン、ドクン……
鼓動が震えた。
「………………嘘だ」
体が熱に浮かされているのは、バスルームの湿気のせい。
「嘘だ」
心臓がドクドクするのは、あなたが嘘をついたせい
「俺の事が好きなら、なんで俺の気持ち……無視するんだよ」
「……涼君」
軋んだ声が心音を押し潰す。
喉を締めつける……彼岸花の色彩
「俺の気持ち無視してヤろうとする、天本さんの気持ちなんか信じられないッ」
塞き止めていたものを解放してしまうと、止まらない。
止められない……
足元でのたうつシャワーの水のように。
俺の心の中の蛇が、のたうっている……
「天本さんなんか、大っ嫌いだッ!!」
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