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誰もいなくなった部屋で2

「俺が母さんにボロクソに言われながらも、ここまで生きてこられたのは、俺が男だったからなんだよな…って思ったら、無性に空しくて。跡取り欲しさのためにただこの世に存在してて、確かに母さんの跡を継いだけど。ホントにそれだけなんだよ。俺には何もなくて、『梓の息子』として見られるけど、誰も俺を『蛍』として見てないんだ」 何、一人でブルーに入ってるんです? 僕は蛍の前に顔を出すと、胸倉を掴んで睨みつけてからキスをしてやった 軽いキスで離れようとした蛍の頭をしっかりと押さえた僕は、蛍の唇を舌で割った 5分近く蛍の唇を味わった僕は、蛍の胸を押して距離をあけた 「視野が狭い男は嫌いですよ。恵も智紀も、『蛍』として見ているじゃないか」 僕だって…と言いたくて、口に出せなかった なぜだろう 胸がすごく痛くて、苦しい 「それとも梓の組織に、その血が染まり出してきたんですか?」 「違う! 俺は…優衣が羨ましいんだ。親父に愛されて。俺は親に何かをしてもらった記憶がない。物心をついた頃には、親父は離婚しててもういなかったし。母さんだって…。俺にいろいろ教えてくれたのは侑しかいなくて…侑だけが。俺、侑には死んで欲しくなかった」 「死んで欲しくなかったのなら、どうして蛍は恵の選んだのです?」 「わかってる。俺のせいだって…。俺が何も考えずにあっちに行ったから。でも、もう母さんの操り人形は嫌だった。嫌味を散々言われて、出来損ないって顔を合わせれば言われて。耐えられなかった」 蛍が、僕から視線を逸らした 「ごめん。侑…好きだったんだろ。俺のせいで…」 ぼそっと小さな声で、蛍が呟いた もしかして…僕は今、蛍を追い詰めてしまった? 蛍は充分に承知してる 侑の自殺してしまった理由で、今でも苦しんでいるのか? だとしたら僕の言葉は、蛍を余計苦しめるだけだったのでは? 僕がはっと顔をあげると、蛍はもう居間を出ようとしているところだった 「蛍、待って」 僕は蛍の背中に向かって追いかけた 僕の呼びかけに足を止めた蛍の背中に抱きつく 「僕と久々に会ったのに、何もしないで帰るんですか?」 「侑のマンションだよ、ここ?」 「小森家の所有物だったのでは?」 「そうだけど…」 「僕を抱くの? 抱かないの?」 蛍が振り返って僕をぎゅっと抱きしめると、「抱く」と呟いた 「あ、あっ、蛍…もっと」 僕は、蛍の制服の上で横になり、腰を浮かした 「もっと、何?」 「そこっ、ああっ、駄目…蛍っ、無理ムリ、ああっ、出る…イキそう」 僕はビクビクと身体を痙攣させて、蛍の腹と僕の下腹部に精液を巻き散らかした 僕の秘部が何度も収縮して、蛍の逸物に刺激を与えたようだった 蛍が「くっ」と顔をゆがませると、僕の奥に向かって熱を吐きだした 「ライさん、ライ…さん」 蛍が何度も僕の名前を呼んで、抱きついてきた 僕の中にはまだ蛍が存在している 子供のように何度も僕を呼び続け、そしてまた復活していく熱量を僕に擦りつけてきた 「もう一回いい?」 「あっ、駄目って言っても、んっ、動くくせに」 「だって、ライさんの中って気持ちが良いんだ。すごく…それに、ライさんの中は俺を離さない。それが嬉しいよ」 「ああっ…馬鹿…なことを、言うな」 滑りの良くなった中で、さっきよりも蛍が激しく腰を振る それがたまらなく僕に快感を与えてくれる 「ああっ、いい…蛍、気持ち良いよ」 「ホントに?」 「ああ、んっ、だからもっと欲しい」 蛍が嬉しそうに笑顔を見せる乱れる呼吸を隠しもせずに、蛍の激しさが増した 目が覚めると、蛍が僕の隣で眠っていた どうやら僕は、年下の男のもとで乱れに乱れて気を失ったらしい 久しぶりだったし…なんて己に言い訳してみる 蛍とは…あまり会えないから たまに恵のマンションに来るけど、僕が呼ばない限り、僕に会いには来てくれない 蛍は、年の近い智紀と世間話をして、帰ってしまう まるで僕を無視してるみたいに… だから僕は、蛍を呼びだす じゃないと僕を抱いてくれないから ずるいよ、蛍 僕に言われなくても、僕を抱きに来てよ 素直になれない僕に気付いてよ 僕はワイシャツを羽織り、ジーパンを履くと、寝ている蛍を置いて、侑の想い出の残る部屋を出た 都合の良い解釈しかできない僕だけど…僕は、僕らしく蛍を想ってるから 蛍、早く僕と言う人間を理解して、僕を奪ってよ 蛍、待ってるから 蛍が僕を組み敷きに来てくれる日を…待ってる 『誰があんたなんかとⅢ』終わり 『誰があんたなんかとⅣ』に続きます

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