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第11話

帰り道からは反対の駅に2駅。 賑やかな海水浴場とは違い 人気(ひとけ)の少ない落ち着いた海辺の旅館に到着。 『わー、意外とキレイ♪』 『おぉ、海が見える~♪』 ちなみにここが安いのは素泊まりだからで ごはんは自分で調達しないといけないんだけど それはそれで楽しそう。 『ちょっと休んだら散歩してごはんも買おうね』 『うん』 穏やかな時間…… でも…… いつもなら2人きりになった途端 くっついてくる広海が全然 傍に来ないのが 気になる…… これも無くなってしまった毛のせい……? だとしたら…… やっぱり ちゃんと謝った方がいいかな…… 『あ、あの…広海……』 『ん~?』 『あの……その…か、勝手に毛、剃って ごめんなさいっっ!』 広海の傍に正座のまま近づいて頭を下げた。 『え……。あ…、あー…それね。 まあ…急にクラスのヤツらと一緒になっちゃって 豪太にそれ、言えなかったから… 見られたくないって豪太の気持ちも分かるし。 俺こそツルツルの豪太がショックすぎて…. 怒ったり、野坂の毛、触ったりしてごめん…』 広海も正座して頭を下げてくれて ホッと胸毛のない胸を撫で下ろした。 そして、広海にくっつきたくなって手を伸ばすと 広海は俺を引き寄せて 『俺が好きなのは豪太だけだよ』 ギュッと抱きしめてくれた。 『ひ、広海ぃ…!俺も広海が好き…!』 そのまま床に倒れて、今日 初めてのキスを交わす。 触れるだけのキスでも十分 幸せで 俺は広海に抱きついて幸せを噛みしめた。 ああ……よかった…… 広海に嫌われてなかった……!! 生きててよかった…! 神様ありがとうっっ!! しばらく抱き合った後、 お腹がすいてきて散歩がてら外へでた。 コンビニでお弁当と花火を買って 旅館でバケツを借りてから 花火OKの砂浜へと向かった。 『夜は涼しいね~』 『うん』 『星、キレイだね』 『うん。あと花火も』 『うん。キレイ……』 線香花火と星。 2人でいると、よりキレイに見える。 海には入れなかったけど 今、楽しいからいいや…… なんて思っていたら 『……せっかくの海水浴だったのに豪太、 海 入れなくて残念だったなー』 ポツリと広海が呟いた。 『…………え?残念って……広海が入るなって……』 『ん?だって……豪太、毛ぇ剃っちゃうからさー。 豪太って毛に守られてるからなのか 意外と肌弱いでしょ?なのに剃ったばっかりの 柔やわな肌で海なんか入ったら絶対 痛いし滲みるし 後から かぶれるのも目に見えてるもん』 『……え…………』 え……? じゃあ、「海に入っちゃダメ」って 本気で怒ってたのって……俺のため!? 『ひろ…ひろ……広海…ぃ…!』 『もー、男子に頼まれたとは言え 女子は ウザいし…豪太とくっつけないし あのまま帰ったら楽しい思い出ないからさ! 悔しくって…! 夜になって、やっと豪太と2人きりで 楽しめて……よかった!ね?』 『……………う、うんっ////!』 う、 う、 うおーんっ! やっぱり優しい……!! 広海は俺の天使だぁぁ!! 嬉しくて嬉しくて、自分から広海に抱きつくと キスをする。 ありったけの「好き」って想いを込めて。 すると………、 広海の目が燃えるように欲を湛えたものに 変わった。 『豪太……帰ろ?』 耳元で囁かれ……俺の体も広海が欲しくて ズクズクと疼きだす…。 返事の代わりに もう1度、広海にキスをして…… 足早に旅館への道を急いだ。

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