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第1話
夏の夜は嫌いだ。
暑くて寝苦しいし、何度も目が覚めてしまう。寝汗だって気持ち悪い。
冷房も扇風機も苦手な俺にとって、熱帯夜は苦痛でしかない。
窓を開けてみても大して涼しくはならないし、仕方なく冷房のタイマーをセットして寝付く頃に切れるようにしておく。
昼間はそこまで神経質じゃないのに、夜になると暑さに苛立つ。
仕事に集中していればスーツにネクタイの暑苦しい服装でも平気で、室内の寒過ぎる冷房の設定温度も気にならない。外へ出ても頭の中は仕事の事ばかりで暑さを忘れてしまう。そのくらいには毎日が忙しくて、必死だった。
だから仕事モードが切り替わると途端に暑さを思い出して気持ち悪くなる。さっさと帰宅してシャワーを浴びても、またすぐに汗が噴き出る。
真夏の熱帯夜が特に最悪だ。翌日が仕事じゃなければ一晩中、冷たいシャワーを浴びていたい。
けれど、そんな俺でも、雨の日だけは別だった。
雨の夜はアイツがやってくる。毎回ではないけれど、夏の雨の夜だけの限定で。
彼を蒸して汗でベトベトする身体のまま、雨なのか汗なのか分からなくなるほど抱き潰して疲れて眠る。その時だけは寝苦しいとは思わない。
背中を向けて寝息を立てる彼を抱きしめながら、その冷たい彼の体温を感じたまま朝までぐっすり眠る。
だから彼の来ない雨の夜は、人肌が恋しくなる。
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