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第2話

「雨、止みそうにないね」  ベッドの中でシーツに埋もれながら窓の外を見て呟いた、情事の後の相手。 「泊まっていけば? 朝まで降るだろ」  事が終われば少しだけ休んで早々に帰宅する。それがこの関係を始めた頃のソイツとのルール。  いつしか朝まで一緒に同じベッドの中で眠るようになったのは何度目の雨の日だったか。 「明日も降ってるかなぁ」  雨が上がれば帰っていく彼を、引き止める事は一度もしなかった。  身体だけの関係と割り切って、雨の日の情事を繰り返す為の俺達のルール。 「ずっと降り続けばいいのに」  聞こえないように吐き捨てた呟き。  とっくに身体だけでは満足出来ない俺の気持ちがバレない様に、雨が早く上がればいいと矛盾した願いを抱く。  この関係は何時まで続くだろう。真夏の雨がこの世界からなくなるまで続くだろうか。それとも突然、なんの前触れもなく終わるのだろうか。  いつの間にか寝息をたてて眠ってしまった彼を抱きしめながら、俺もまた目を閉じる。  不快な夏の夜の暑さを忘れさせてくれる、ただ一人の存在。きっと彼がいなくなれば俺は夏が来る度に寝不足になってイライラするんだろう。  だったら今のうちに、彼がまだ腕の中にいるうちに。しっかりとその冷たい肌と華奢な身体を記憶に残しておかなければ。  いついなくなってもいいように。雨が降っても来なくなったその時に少しでもその温もりを思い出して眠れるように。  今だけはどうか、雨よ止まないでくれ。

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