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第14話

 彼をベッドに倒すと濡れたシャツを脱ぎ捨てて上に跨った。ずぶ濡れの彼の服の端から腰に触れるように手を入れる。冷えきった身体を温めたくて、濡れた服を破けてしまいそうな勢いで脱がした。 「だから、終わりなんだと……」 「終わりにしたかったよ、雨の日だけの関係なんて」  彼が去っていくのを止めもしなかったに、今更曝け出す気持ち。  怖かったんだ。夏が終わってしまうのが。俺だけ溺れて抜け出せなくなるのが。  結局、親友に思いを告げられなかった時のまま、何一つ成長していない自分を認めたくなくて逃げたんだ。  もう慰め合いは必要ないだろうと、平気な顔で突き放して。 「でももう無理だ……会わずにいれば忘れられると思ったのに……」  冷たい肌に、熱くなった舌を這わせる。  雨の味がして、それが無性に愛しくて。 「雨が降る度に寂しくて仕方ない。独りでなんていられない」  だからどうか雨の夜は、俺の腕の中にいてほしい。それだけで俺はいくらでも愛情を注げるから。 「……雨の日、だけ?」  彼の目から零れ落ちた雨の雫を舌で掬うと涙の味がした。 「雨でも、晴れでも、天気なんてもうどうでもいい」 「……うん。オレも……雨の日を理由に会うのはもうイヤだ……」  俺の身体を抱き寄せる細い腕に熱を分け与える。  冷えた身体が俺の熱で温もりを取り戻して、そのまま熱を保ったままずっと隣にいてほしい。 「会いに来てくれて、ありがとう……」  臆病な俺を受け入れて、待っていてくれて。 「雨が、降ってたから……ね」  微笑んだ口元を啄んで、ぎゅっと抱き締める。 「これからは、雨じゃなくても会えるね」  囁いた声に涙が出そうになって、誤魔化すように口付けた。 「夏が過ぎても、雨じゃなくても、いつでも」  彼の言葉に答える様に何度も口付けて温もりを分け合った。  彼の中の雨はいつしか心地のいい鼓動に変わり、俺の中の雨雲から隙間を見つけて光がさしていく。  寂しくないよ。雨が降っても。  必ず雨は上がって、何度も朝を迎えては季節が巡るのだから。

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