「上条くん､これ４番テーブル」 「はーい」 聞き慣れた低い声､いつもの声調 動きに合わせて軽く揺れる鮮やかな金色の髪の毛 普段は気にも止めない彼の仕草や特徴に今の自分は酷く敏感になっている オーダー品を手に取りチラリと厨房にいる彼に視線を向けると不意に目が合い､じっとりと熱を帯びた瞳に見つめられて咄嗟に視線を逸らす 意味が篭ったその表情に不覚にも艶めかしさを感じてしまったのだ 俺は平常心を保つのに必死であまり彼を意識しない様にと心掛けているにもかかわらず彼はそんな俺の心情を他所に余裕の表情で仕事をこなしている 第一､俺達の関係を店の誰かに知られてしまったら責任を取らされるのは彼自身の筈なのに いや､もしかすると彼はそのスリルを楽しんでいるのかも知れない そして所詮俺は彼の悪趣味な遊び道具の1つにすぎないのだ まぁそんなお遊びに誘われるがままに流される自分も不甲斐ないのだけれど... そんな事を考えていると自身の口から小さな溜息が零れた 今日のシフトは24時(ラスト)まで... ぼんやりと店の時計を眺めながら時間を確認すると23時を回っていた｡閉店まで後30分程度 きっとあの卓の客で最後だろう､とさっき料理を運んで行った卓のテーブルに視線を移すとグラスも皿も空になっている様だ｡このまま何もオーダーが無ければ早くお会計を済ませて締め作業をしてしまいたい 今日はバイト中ずっと店長の事が脳裏から離れなくていつも以上にドッと疲れを感じた 「お疲れ様です」 俺の願望通りに直ぐにお会計をして帰ってくれたお陰で予定より少し早めに勤怠を切ってキャストさん達に挨拶をする 毎週金曜日は比較的忙しい日が多くて学校も次の日休みなのでラストまでのシフトが多い さ､早く着替えて帰ろ... いつもなら賄(まかない)を食べてから帰るのだけれど今日は一刻も早くこの店から出たくて男子更衣室の扉を開けて中に入り鍵を掛けた 「お疲れ様､凪(なぎ)君」 「...入ってるなら鍵くらい掛けて下さいよ」 最悪だ...よりによって今一番顔を合わせたくない人物と密室で2人きりになってしまった｡しかも誰も居ない事をしっかり確認しなかった自分の不注意の所為で 「いいじゃん､男の子同士なんだから」 「そうゆう問題じゃありません､てか貴方は男の子って歳じゃないでしょう」 俺の心情なんて気にも止めない目の前の男は制服のシャツを粗雑に脱ぎ捨てるとジリジリと距離を詰めて来て､部屋から出ようと鍵の部に手を伸ばしていた俺の右手首を掴み取ると自身の口元まで引き寄せた そしてあろう事か俺の指先を咥えると慣れた素振りで舐め始めてしまった 「ちょっ､何やってんすか...こんな所で盛んないで下さいよ」 「ねぇ凪くん､今夜うち来ない？」 「っ...行きません！」 流されるな俺... あれは事故だ､いきなりあんな卑猥な光景を目の当たりにしたら健全な男性なら誰だって興味を持って当然だ 「この前の続き､しよ？」 ピチャピチャと卑猥な音を立てて誘惑してくるこの状況に思わず喉を鳴らす 「だからしませんって...だいたい俺じゃなくても幾らでも相手いるでしょ」 「凪くんがいいんだよ､凪くんに触られてから体中疼くんだ...ねぇ責任とってよ？」 俺をじっとりと熱を持った目で見つめて自ら自身の主張した股間を俺の脚に擦り付けながら､さっきまで舐めてベトベトになった俺の手を自身の胸元まで誘導させると指を乳首に触れさせた挙句「んっ」なんてやらしい声を出すもんだから俺のアソコも見事に反応してしまった 「フフ､勃ってるね 今日はいっぱい虐めてね？」 「っ......この...ドM店長がぁ！」