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依存症3

「俺、これからあの人を抱くんだよな…?」 ふとホディーソープの横に並べられている透明な液体が入ったボトルやチューブタイプのクリームの様な物が視界に入りまじまじとそれらを見つめた 如何わしいデザインの物からシンプルでお洒落な物まで複数ある... 一番初めに目に止まった黒いキャップが特徴的なボトルを手に取り裏のラベルを確認すると男性用ラブローションと書いてある ローションに男性用なんてあるんだ... 本来なら圧倒的に女性側に使用される目的が多いそれが少数の使用目的者に向けて開発されている事に関心しながらも他の軟膏剤に視線を移した ハンドクリームの様な見た目の物を確認すると全てボディケア用の軟骨剤だった さっき言っていた''時間がかかる''とはこの事だ きっと前者は事前の準備用で後者は事後に使用するのだろう ちゃんと自分の身体大事にしてるんだ そう思って少し安心する でもそれなら何故いろんな人と身体を重ねるのだろう 特定の恋人とか作ればいいんじゃないか... なんて、やる事だけが目的で付いてきた俺が言える事じゃないけど シャワーを借りて浴室を出ると脱衣場に新品の下着と大きめのバスローブが用意されていた 紺色の質のいいタオル生地に腕を通すとやっぱり少し大きくて、萌袖状態の手元をぎこちなく揺らすとふわりと柔軟剤の優しい香りが鼻をかすめる 使い古した感じはしないけれど、何度か使用して大事に手入れされている様に思えた 店長のスペアだろうか... サイズ的に店長の身長なら丁度良さそうに見える ウエスト部分を紐で調節して脇腹付近でりぼんを結ぶとドアの向こう側からコンコンと軽いノック音が聞こえた 「凪くん、開けていい?」 ゆっくりと紡がれる言葉 低くも高くもない深く落ち着いた声にさえ、色気を感じる 「はい、どうぞ―――――」 返事を返し終える前に横にスライドしていくドアをぼんやりと目で追いかける 「凪くん」 不意に自分の名前を呼ばれてドキリとする 頭を少し上げて店長の顔を見上げると彼の視線は俺の顔よりも下に向いていて、その目はじっとりと熱が含んでいる様だった 「やっぱり少し大きいね」 そう言って俺の胸元に飛び込む様に顔を埋めて、後ろに回してきた両手はぎゅっとバスローブを握りしめていた 凄く凄く、愛おしそうに 「でも、似合ってる」

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