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動揺
[視点:飯塚]
……突然のこと。早朝のケータイから聞こえたヒロの言葉に、俺は動揺していた。
『あのさ……今までありがとな。お前らといて俺楽しかった。甲斐田や紗代たちにもこっそり伝えといて。……うん、そのうち分かるから。……じゃあな』
寝起きのイタズラにしては妙にタチが悪い。
『おい、なんの話だ?』と言っても『そのうち分かるから』と返された。
……あいつ、何かしでかしたのか?
俺は嫌な予感がして『情報屋』に連絡をする。
ここらの警察をやってる親父を持つ、色んな情報を持った幼馴染だ。別のクラスだけど同じ学年。
「……もしもし? 悪いな、朝早くに。ちょっと聞きたいことが……――――え?」
丁度タイムリーな情報があると言って教えられたのは衝撃的な内容だった。
「曽我が……殺された? いつ!?」
……曽我が昨夜、何者かによって撲殺されていたという情報だった。未だ情報規制がかかっていて報道はされていない極秘情報だ。
「――――あー……。わかったわ、なんとなく察しがついた。もしかしたら後でお前の力借りるかも。……ん、サンキュ。その事件の情報またあがったら俺にも回して」
……わかってしまった。
これをやったのは、きっとヒロだ。
冗談だろ……。
想像もしていなかった事件が実際に起きてて、しかもその加害者がいつも一緒にいたヤツで。寝起きの頭だからこそ、「これは夢じゃないか?」と何度も思ってしまう。いや、夢じゃないんだよな。
でも、どうしてだ?たしかに放課後残されてなんかの手伝いさせられてたっぽいけど、それくらいで人を殺すようなヤツじゃない。
いや、その『手伝い』にこそ何か秘密が?
……絶対、何か事情があったに違いない。あいつがただの喜悦のためだったり、並大抵の恨みで人を殺す人間じゃないのは俺が知ってる。誰が何と言おうと、あいつはそんな理由で人を殺さないと言い切れる自信があった。
ヒロは俺や甲斐田たちに別れの言葉を言った。っつーことは、たぶんもう逃げてるんだな?
――――どうする? ヒロに俺ができることはなんだ? 考えろ……
そうだ。
そして俺はすぐさま閃き、甲斐田に電話した。
「もしもし、甲斐田? ……寝ぼけてんなよ。緊急事態だ。ちょっと手貸して」
――――……ヒロ、これまでなんもしてやれなくてごめん。気づかなくてごめん。でも今から、俺のできる限りでお前のこと助けてくから。それまで、耐えろよ。
俺はケータイとカメラを引っ掴んで家を出て行った。
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