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そんなこんなのおいしいはなし 6【完】

 食後のドリンクまで飲み干し、ご満悦のリョウ。  ……の、はずだったが。 「……ごめんなさい」  頭を垂れて床に正座のリョウと、明後日を向いたまましかめっ面で煙草を吸うアヤ。普段なら、リョウといる時は換気扇の下やベランダへ出て吸うが、今日はそんな気遣いもなく、気怠げにソファで吸っている。  苦々しい気分で壁の時計を見ると、部屋へ戻ってきてから一時間少ししか経っていなかった。なのになんなんだ、この疲れは。 「なんでこうなった……」  煙を大きく吐きながらアヤが独り言のようにこぼした。 「美味そうなアヤが悪い」  聞こえるか聞こえないかの声でぼそっと呟いたが、幸か不幸か聞こえてしまった。 「ハァ⁉」  振り向いたアヤの目は見たものを切り裂いてしまいそうに鋭く、眉間には深い深い皺。 「ごめんなさい」  リョウがますます小さくなる。 「ですからあの、アヤさんが豚饅を召し上がるご様子があまりにエロくてついムラムラ来てしまったと申しますか……」  目つきの鋭さを少しだけ緩めて、でも眉間の皴はそのままで、バカバカしいリョウの言い分を聞く。 「にしたってシャワーぐらい」 「えっと、それと、アヤさんの『だめ』に、不覚にも少々萌えてしまいまして、いっぱい言わせてみたくなってしまい、このようなことに……」  俯いていたリョウがちら、と上目遣いにアヤを見ると、瞳には鋭利さの代わりに呆れの色が。 「ばか」  煙草の火を消して体ごとリョウの方へ向き直った。 「おいで」  ソファをぽんぽん叩くと、リョウがおずおずと隣へ来て座った。 「もう怒ってへん?」 「……どうかな」  少しだけ姿が見えたかと思った期待に裏切られ、リョウはまたしょんぼりと眉を下げた。 「今夜はもう疲れたからシャワー浴びて寝るよ」  そう言って立ち上がるアヤに、リョウはショックを隠しきれない。いつも会う時は、その日の夜と翌朝と、夜を跨いで二戦交えるのが恒例となっているのに。どうやらさっきのもカウントされてしまったようだ。自分で蒔いた種とはいえ、リョウはまだ気持ちよくなってないのに―― 「マグロでいいなら挿れていいよ」  浴室からそんな声だけがリョウに届けられた。その瞬間、リョウの顔がぱあっと明るくなる。そして弾かれたように浴室へ駆け込んだ。 「アヤ、アヤ、俺も入る!一緒に入ろ」 「すぐ調子に乗る……」  しっぽを振ってじゃれついてくる犬のようにハイテンションでまとわりつかれ、アヤはうんざりした口調でそう言いながら、愛おしそうに目を細めるのだった。 【おわり】

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