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限界ラバーズ 1

 リョウ目が覚めたのはまだ朝ではなく深夜。ここはアヤの部屋だ。  毎回会うのは久々で、二人の気分が盛り上がらないはずがなく、昨夜も例に漏れずさんざん激しくいかされたあと、気を失うように眠ってしまったようだ。身体が鉛のように重く、節々が痛むが、心は満たされていた。  目を開けばすぐ近くに、最愛の人の寝顔。これ以上の幸せがあるだろうか。リョウは胸がいっぱいになった。の直後、言いようのない不安に襲われ、何かが込み上げてきた。胸が苦しくて、込み上げてきた何かがあふれてしまいそうで、慌ててベッドから飛び出した。 ***  アヤはなぜだか分からないけど、目が覚めた。まだ寝入ってからいくらも経っていないのに。そうだ、ついさっきまで隣で眠る寝顔を眺めていたはずだ。  ついつい毎回、年甲斐もなくがっついてしまう。年下の、それもまだそんなに抱かれることに慣れていない相手に、だ。昨夜も例に漏れず、リョウが気をやるまで抱き潰したのだった。  すぐ隣にあるはずの横顔が今はなく、そうか、目が覚めた原因はそれかと思い至る。いくらか狼狽しながら部屋の中を見回すと、リョウは寝室と続きになっているリビングのソファに、こちらに背を向けるようにして座っていた。眼鏡をかけていないのでよく見えないが、肩が震えていて、泣いているように見える。俯き、口のあたりを手で覆って、時折嗚咽が漏れ聞こえる。見ていられない、とアヤは眼鏡を手にベッドから飛び出した。

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