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限界ラバーズ 2
「どうしたの」
「あっ! ごめん、起こした?」
不意打ちでアヤに声をかけられ、リョウが飛び上がった。
「そんなのいいから、どうしたの」
「え、いや別に、あ、えと、そう、アヤに会えて嬉しいなあって」
アヤが隣に座るが、リョウは目を合わせない。しどろもどろで、本当のことを言っていないのが丸わかりだ。こんなに嘘が下手なのに……
「嘘つくなよ」
「ほんまやもん、どんだけこの日を楽しみにしてきたかわからへん?」
「わかるけど……それだけじゃないだろ。無理に笑わないの」
「……」
カラカラと笑っていたリョウが、眉尻を下げ再び俯いた。
「……なんもない」
「んなわけないだろ」
「なんもないって~!さ、寝よ寝よ。アヤも早よ」
「リョウ」
アヤの声が低くなり、リョウの手首を掴んだ。
「隠し事、するの」
アヤの冷たい目が責める。
「……そんなんちゃうよ……」
リョウは手首を掴まれたまま項垂れ、二人の間を沈黙が流れた。
「俺に言えないことなの」
「だからそういうんやなくて……」
リョウの瞳が揺らめき、再び潤い出す。
「……時々、どうしようもなく不安になって」
「うん」
「もし、俺らのどっちかに何かあったとして、それってどうやってわかるんやろ」
「……」
「例えば、事故に遭ったとか、急病で倒れたとか、……死んだとか、なった時、家族でもなくて一緒に暮らしてもない俺らは、そのことをいつ、どうやって知るんかなって」
「……うん」
「ごめん、変なこと言うて。アヤが今頑張ってくれてるの、ようわかってるから」
片時も離れたくない、だなんて駄々をこねる時期は過ぎた。離れていても揺るぎない愛を自負している。けれども、離れていればやはり寂しくて、いろいろなことを考えてしまうリョウなのだ。
今度はアヤが黙り込む番だった。口を開けば会いたいと、やいやい言ってきたのも今は昔。いつからかリョウはそんなことをあまり口にしなくなった。そんなこと言っても会えない時は会えないのだし、ようやくそれを理解したんだろう、ぐらいにしか思っていなかった。だけどそれは思い違いで、言わなくなったからといって平気になったのかといえば、たぶん違うのだろう。
――そろそろ、限界なのかもしれない。
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