「ぷにぷにしてるね」 　その言葉にリョウははっとした。 　自覚はあった。最近少し、たるんできている気はしていたが、気のせいということにしていた。 　アヤはからかうでもなく真面目な顔で、並んでベッドに横たわるリョウの二の腕をつまんでいる。 　齢三十、定期的な運動もせずに好きなものを好きな時に好きなだけ食べていれば、そろそろやばい。グルメで、特に甘いものが大好きなリョウには、心当たりは存分にある。だが恋人にずばりと指摘されるのは、ちょっと面白くない。 「そ、そんなことないって！」 「運動不足じゃない？」 　そういうアヤはどうなんだ、と言い返そうとして口を噤む。リョウより運動と縁がなさそうなアヤは、全然ぷにぷにしていない。ここらへんは食生活の差なんだろうか。 「運動、しよっか」 　そんなアヤの声が聞こえた次の瞬間リョウの視界は反転、アヤの上に乗せられた。半月状の不敵な瞳に、にぃと口端が上がったアヤと目が合う。 「……月に数回なんて、運動したうちに入らへんよ……」 　しょんぼりとそう呟いたかと思えば、次の瞬間にはアヤの首筋に顔を埋めた。本当は毎日がいいのに、とは心の中だけで続けた。 「結局、やるんだ」 「やらいでか」 　リョウはスイーツの代わりにアヤを貪ることにし、アヤの首筋に噛みついた。 　甘くもふわふわもしていないけれど、どんなスイーツよりも幸せな味がした。