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【SS】愛しい違和感

「そうなんや。ホテルなんか今一番大変やもんなぁ」  深夜、珍しくアヤからの着信に起こされ、とりとめのない会話をしているリョウだが、なんだか違和感がある。違和感のもとは、二つ。一つは、特に用件がなさそうだということ。いつもなら、何か伝えないといけない用があるときにしかアヤは電話をかけてこない。そしてもう一つは、やけに通話時間が長いこと。いつもなら、用件さえ伝え終わればすぐに切ってしまうのに。 「……なんかあった?」  違和感の原因を探りたくて、尋ねてみる。 「……別に」  絶対に何かありそうな口ぶり。顔を見ればすぐにわかるのに、残念ながら顔が見える状況ではなく。    現状、様々な業界が大打撃を食らっているが、アヤが勤務するホテルももちろん例外ではなかった。本来なら春休み、卒業旅行などでそれなりに賑わうはずなのに。アルバイトスタッフはシフトを削られ、副支配人であるアヤだって珍しく定時上がりだ。  思いもよらない暇な状態となってしまったが、リョウに会うこともできず。  なんだが心にぽっかりと、穴が開いたような。   「……眠れなくて」 「そっか」  あのアヤがもしかして寂しがっているんじゃないか?  リョウはこそばゆい気持ちになったが、本人に確認するのはやめておこうと思った。 「んじゃあ、朝までずっと電話切らんとこっか。アヤが寝落ちするまで」 「そんなに話すことないよ」 「じゃあ、じゃあ、俺のどこが好きか順番に言うてって?」 「やっぱり切るよ」

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